尊さんは、そのまま少しの間美衣子の手をとったまま、これからどうしたら良いか説明をした後、ゆっくりと立ち上がった。


「それでは、申し訳ありませんが、私はこの辺で」


「あ、うん……美衣子、ちょっと送って来る」


「う、うん」


 立ち上がった彼女に続いて、俺も立ち上がる。

 気がつけば、時刻はもう深夜と言っていい時間になっていた。

 美衣子の返事を聞いてから、俺は尊さんと連れ立って玄関へと向かう。

 勿論、猫神達もついてくる。

 いくら、こいつらが付いているからと言って、女の子一人を夜道に放り出すというのも良くないだろう。


「拓真さん……」


 そんな俺の考えを読んでいたのか、玄関を出たところで、尊さんはくるりと振り返った。


「私は此処までで大丈夫です。天ちゃん達もいますし。有村さん不安だと思うので、付いていてあげて下さい」


「わかった、そうするよ」


 後ろで「暁がいても役にたたないもんねー」とか、「寧ろ足手まといだな」とか言ってる猫神達には腹がたつが……無視しておく。


「ですが……出来れば明日、有村さんだけではなく、他に一緒に肝試しに行かれた方達も神社に連れて来て頂けませんか?状況から考えても、有村さん以外にも被害がある可能性がありますので」


 「お願いできますか?」という彼女に、こうなってしまっては仕方無いだろうと引き受ける。美衣子としては、説明するのもさる事ながら、皆に知られるというの自体を避けたがっていたが、もう何も起きないように対処すべきなのは明らかだ。


「それでは失礼します」


 俺の返事を聞き届けると、尊さんはもう一度頭を下げて、猫神達を連れ、踵を返した。

 部屋に戻ると、美衣子はぐったりとベッドに凭れて、目を瞑っていた。


「巫女さん、帰ったの?」


 俺が部屋に戻って来た事が分かると、美衣子はぱっと目を開き、とって付けたような笑みを浮かべる。

 だけどその声には、疲労のせいかちっとも表情が見られない。


「あぁ、それより……大丈夫か?横になるか?」


 そんな僅かな仕草にも無理しているのが見てとれて、言わなきゃいけないことを飲み込んでそう訊く。

 でも、美衣子は首を横に振り、


「ううん。もう随分楽になったから。凄いね、あの娘」


 そう言って、やはり笑ってみせる。

 美衣子は、泣いたせいか、はたまた自宅にいたからか、化粧をしておらず、今更だがいつもと少し顔が違って見えた。

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