第37話 悪役令嬢で敵はイケメン四人、ヒロインに近づけさせないため(以下略

 そこから私は雅人と対戦してボコボコに返り討ちをしてやった。雅人は不満を叩いたので三回ルールにしたら三回中三回負けてから泣き崩れ。他の男らは茫然。


 ゲームに勝ったときは絶頂しそうなほど気持ちよかった。「悪役令嬢で敵はイケメン四人、ヒロインに近づけさせないため、グループ追放されそうになりながらも私TUEEEEして、ヒロインと百合百合していれば四人が今さら犬の如く腰振ってきましたけどスルーして学園ライフを楽しみます。」ってなろう小説にありがちな共感性羞恥が悶え苦しむタイトルできちゃったわ。いや~草草! ――以上、現実逃避の妄想劇。


 雅人はアホみたく強かった。皆が見ているというのに酷く惨敗してしまった。なにかの間違いだ、不正だと抗議をして三回ルールにしたのも私。記憶は途中から抜け落ちて、意識が戻るとコントローラーを強く握ってはヤムチャみたく丸く倒れこんでいたのだ。


「もしも~し、パイセン生きてますかぁ? もう一度対戦しますぅ?」


「…………」


 真上からまあ煽る煽る。答えるわけがない。声色が不安定で吹き出しそうなのが丸分かりなのだから。もう一回やらせてくださいってすがりつくとでも?思い通りにしてたまるかってんだ。勝負には負けたけど、心はまだ負けていない。


「いや~、まさか三回中三回挑んで全て負けるのは惨め……ぁう、ごめんなさい☆ かわいそうかなって~」


 露骨な間違いに戦う意思が揺り動かされる。三咲は他人の不幸で飯が上手いと言いたげに白い歯を見せ、睦月は喜怒哀楽どれにも当てはまらない無表情。恵はちょっと同情して近くに紅茶の入ったティーカップを置いた。唯一、回復した愛理が私の頭をよしよしと撫でてくれたことが救い。


「次は足の指だけで操作するのでどうですかぁ?」


「それはお行儀が悪いからやめなさい」


「ごめん恵にい。だって少しでもハンデつけなきゃパイセンに不利だと思ってさぁ」


 悔しい、悔しい……。だが、これでいい。これでこそ「ぐちょぐちょメモリアル~桃尻エリカ追加ルート版~」なのだ。


「うふふ、なかなかやりますわね。雅人さん、あなたには完敗ですわ」


 敗北を口にするのは癪だが立たないと前に進めない。むくりと起き上がり、完全に復活できたわけではない心身に無理やり力を入れて奮い立たせた。


 勝負事で見返す勝算はない。が、敗挽回できる可能性は無限大。もう男なんかに構うのはやめよう。恋愛イベントを私が作り上げるんだ。ゲームの山々を何かないかと見渡すと、ゴーグルの形をした物がぽつんと放置されていた。


 あれは、たしかVR……? バーチャルリアリティーとかの略でゴーグルを装着したらゲームの世界が前に広がってよりリアルなゲームができるって近年話題のゲーム機。利用できそうだけど、桃尻ルートに発展するかどうかって考えたら微妙だけど……ええい、なにを迷ってるの! もう賭けるしかない! お色気恋愛漫画でVRが登場するのあるある、ゲームの世界で物を掴んだと思ったらヒロインの胸だった説を立証してやるわ。


「まあ! これってVR? 私、実物を手にするのは初めてですわ。一回やってみてもよろしいかしら?」


「ジャンルはホラーゲームだけど……いいの……?」


「全然よろしくってよ」


 よくない。ホラーは大の苦手で漏らす自信あり。最悪失禁したとしても、下に履いてるパニエが吸収してくれることを願おう。洗濯する若林にはもうしわけないけど。

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