第13話 これぞ青春!?私に続け、告白ラッシュ!

 大胆な告白をし終えれば、四人の面構えは二手に分かれていた。ちょっとばかし唇を右上に引きつらせる雅人と恵に、岩のように面白いほど強張る睦月と三咲。三咲が手に持っていた開封済みの缶コーヒーを下にぶちまけようとも、誰一人びくともしない。よっぽどダメージが大きかったことが分かる。本命の愛理に至っては何が起きたか分からないといった感じで真っ白に燃え尽きていた。あはは、可愛い! いきなりだったもんね、ごめんごめん☆ 返事は待ちまちゅよ~。


 なにはともあれ、私は一足先に思いを伝えた。陰から見守りながら結ばれることが悪いってわけじゃない。ただ、相手に自分の気持ちを全身で、素直に直接、ここ大事! 伝えることが恋愛が実る一番の近道でもある。例え何度断られようが、距離が出来ようが、嘘のない言動あるのみ。他人を察するなんてエスパーにしかできないのだから。生きていた頃に「いちご100%」を読破して、ヒロインの西野からそう学んだ。漫画いえど、いつしか知識となる。チェリーブラザーズ、あんたらに足りないのは経験値よ。


 撃沈する四人をさらに谷底へ突き落すように、鼻息で「ふふん」と鳴らした。好きな子の告白バージンを奪ってやったことに勝利は我が手に渡ったのだ。誇らしげに空を見上げていたのも束の間、


「僕も愛理が好き」


「は……? あんた今なんて……」


「僕も好きだって言ったの」


 睦月は通常のボソボソとした話し方ではなく、覚悟を決めた眼差しでハッキリとそう述べた。時が止まりかけていた静寂な空間へ、思わぬ爆弾を投げ込んだのも同様。


 どうゆうこと? 私は軽くパニックになって、睦月がなぜこんな行動にでたのか理解できずにいた。睦月は一番告白をするまで時間のかかるキャラ。ここで男を見せるなんて、ゲームでのもどかしい展開はなんだったのかと思えるほど展開が早い。っていうか、どさくさに紛れてなに告白してんの!? ふざけんな! 予定がいろいろと狂っちゃうじゃないの! しゃしゃり出るんじゃない若造!


  そんな憎しみの念を込めに込めた強い眼差しを送ったが、普段大人しい睦月だからこそ際立つ、大胆な行動に他の三人のハートもくすぶられてしまったのだろうか。乗るしかない、このビッグウェーブに並の告白パレードが以下続く。


「睦月にい、ずるいよ! 僕だって愛理先輩のこと大好きなのに!」


 愛理の手を握りつつ、あざとい上目遣いをする雅人。


「おやおや、偶然だね。僕も愛理くんのこと、一人の女性として好意を抱いていたんだ」


 余裕ぶっこく恵。


 なんなの、こいつら! 次から次へと……っ、キィー! 腹立つ! 


 でも、まだ告白してない男が一人いる。三咲だ。あいつは馬鹿みたいなツンデレだし、人前で想いを伝えるなんてアオハルな真似、絶対に好まない人種。本人は告白大会の流れをスルーして一人で呑気にスマホゲーム。雅人や睦月に恵からも「しないの?」って視線投げつけられているのにお構いなし。よっし、上手くいけばライバルが減る。このまま告白はするなよ、いい? フリじゃないからね、やめなさいよ!?


 眉間にシワを寄せては、次は三咲に目で訴えたが、その願いは瞬く間に散ることとなる。


「俺は別に愛理のこと、どうも思ってねぇけど……お前らが彼氏になるって聞いたらなんかムカつく」


 KU・SO・GA!


 ああもう、わけわかんない。どうして全員同時告白になっちゃったわけ? ゲーム内でもそんなイベントなかったじゃない。……というか、もしかしてだけど私がしていた「ぐちょぐちょメモリアル」は、ゲーム上での動きをしていただけであって、ゲームの世界にに入り込めばもう無法地帯。この先四人の動きやイベントを完全に知っていたとしても、今の段階でこれだけ動きが狂っちゃ……無意味でしかない!


 つまり、愛理と本当に結ばれたいのなら、ぐちょメモの知識を捨てて本格的に桃尻エリカとしての魅力で惹きつけろってこと――!?

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