エピローグ
「……で、あの……あなた達は? その、秋にぃとは、どういった御関係で?」
俺の部屋の床に正座して向き合う女子三名。口火を切ったのはまひるだ。
「あ、やっぱり自分から名乗らせてもらいます。半田まひる。秋にぃの従妹で、大学生です。この冬休みに、こっちに引っ越してきまして、挨拶に来ました。よろしく」
よろしく、と言ったモノの、その表情は言葉とは裏腹に牽制する様なモノだった。
「あ、よろしくお願いします。あたしは、久住優乃です。秋くんとは……どんな関係、かな?」
そう言って優乃先輩がこちらを見る。いや、三人の視線が俺に注がれている。
……何だ、この状況は? 熱のせいか? ワケの分からんプレッシャーを感じるぞ。
「あー……」
『…………』
「え、と……ちゅ、中学の時の先輩で、今は……」
「……今は?」
「えー……と、友達? かな?」
俺は謎のプレッシャーに気圧されながら何とかそう答えた。発言が異常に困難だったのは、きっと口の中を切っているからだけじゃない。
「……そう。友達、です。中学の時のただの先輩で、ただの友達です」
全くの無表情となった優乃先輩が、全くの無感情な声で言う。
だが、何故だかその声色には多分な殺気が込められている気がして、俺は戦慄に滝の様な汗を流した。
「ふうん……で、こいつは?」
次にまひるが視線を送った先はリライだった。
「誰がこいつですかっ! 自分わ、戸山リライですよ!」
「……戸山?」
……あぁ、まずい! 待てリライ! と言う暇もなく、彼女は言葉を紡いでしまう。
「自分わ、アキーロの妹ですよ! アキーロわ、リライのお兄ちゃんですよ!」
「はあぁ!? んなワケないじゃん! こっちはね、こーんな小さい時から秋にぃを知ってんの! 秋にぃには春にぃってお兄ちゃんがいるだけで、妹なんかいねーっての! 第一! あんた銀髪だし目ぇ碧いし! どう見ても日本人じゃないじゃん!」
まひるが大きさを表す様に指で示す。……俺は虫かハムスターか。手の平サイズだぞソレ。
「……ま、まひる、ソレは――」
「だから自分わアキーロのパパが海外で浮気した時にできた隠し子ですよ! 確か……ろしあだか、いぎりすだかで! ……どっちでしたっけ? アキーロ」
あー言っちゃった!! 従妹にも通じるのかこの大嘘!
「はぁ? 四季伯父さんが浮気なんかするワケねーだろ! あの人、夏美伯母さんにゾッコンだったんだから! テキトーなこと言ってんじゃねーよ!」
わー! どーしよ! なるよーになってきたぞ! どーしよどーしよどーしよ!
「……そう、なの? 嘘、なの? 秋くん」
気づけば優乃先輩までもが怪しむ様な視線を送ってきている。マジでどうしよう?
「……ま、まひる」
「……なあに?」
俺はまひるに呼び掛ける。
……どうする? ここで選択を誤ったら色々まずい。色々と失うことになる。
「男ってな自分じゃどうしようもない時もある。親父も、きっと海外出張で寂しかったんだよ」
「…………」
「…………」
「……そう、なんだ。何かショック」
んやっちまったあぁ!! 祟らないでくれ親父! またもあんたを浮気者にしちまった!
「あぁ、でもこいつのことは、まだ母さんや兄貴にはナイショなんだ。だから黙っててくれ」
「……ん。分かった」
そう言って頷くまひる。あはは、親父、俺が死んで向こうで会ったら殴っていいぞ。
「……で、今日はどうしたんだ、まひる?」
俺はまだ顔中に汗を浮かべながらも、無理やり話題を変えることにした。
「あ、うん。秋にぃ、ウチの実家に来たんだって? その時丁度引越しの時期で会えなかったから、お正月の挨拶に。明けましておめでとうございます」
そう言ってまひるが深々と頭を下げる。そうか。そういう上書きが成されたのか。
救急車で運ばれたから実家の方に連絡が行った。で、母さんから見舞いを頼まれた、といったところか。
ソレか表にいるリライに聞いたのかな?
まぁ、そこはいいか。
「あ、明けましておめでとう。今年もよろしく」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。コレからはこっちに住むんだから、しょっちゅう会いに来るからね。いっぱいよろしくしてもらうんだから」
「あ、あはは……」
上機嫌な笑顔のまひるとは裏腹に、他二名の視線から注がれる殺気を俺は苦労して無視した。
「でも、久し振りだね秋にぃ。まひる、女の子らしくなったでしょ?」
そう言ってまひるが自分の服装を見せる様に俺に近寄って、顔を寄せて来た。
確かに、相変わらずチビだし胸もぺったんこだが、今の彼女は女性以外の何にも見えない。
「ああ、今は一目で女だって分かるな」
「えへへへ……よっしゃあっ!」
そう言って満面の笑みでガッツポーズを取るまひる。
女の子がはしたない、と言うべきか迷ったが、俺は今まで二度まひるを不機嫌にしてしまったこの言葉で、彼女がこんなに喜んでくれるようになったことが無償に嬉しかった。
「秋にぃ、昔もこんな怪我したよね。懐かしいな……この怪我はどうしたの? またケンカ?」
「だから、ソレわあんたの――」
「足滑らせちゃってさ。階段から落っこちちまったんだ」
まひるの当然の疑問に怒鳴りかけていたリライの声を遮って、俺は嘘を吐いた。
「アキーロ!!」
「黙ってろリライ。その道を通るのを決めたのは俺の意志、その道を進んだのは俺の足。そんで、そこで滑って転んで怪我したのは俺の責任、ってワケだ」
納得がいかない、といった表情のリライに、ぴしゃりと俺は言い放った。
「……はい、ですよ……」
しゅん、とうな垂れるリライ。アホ毛もご主人様と一緒に下を向く。
「……よく分かんないけど、やーい、怒られた。ざまーみろ」
よしゃあいいのにまひるがリライに追い打ちを掛ける。
「ウニャ~~ッ!! 何ですかこいつわっ! すげームカつくですよ! アキーロ! さっさとこいつに帰るよーにいーやがれですよ!」
「誰がこいつだよっ! 怪我人がいるのに騒ぐなっつーの! まひるが看病するからあんたが出て行けばいいじゃんっ!」
「フ~~ッ!!」
「ウ~~ッ!!」
猫の睨み合いが勃発してしまった。どうしよう。
「こ、コラ、まひる。女の子がそういう口の利き方をしちゃいかんぞ」
俺は恐る恐る、こちらに矛先が向かないよう、そこはかとなく機嫌を取る様な声で言った。
「あ、そうだよね。ごめぇん、秋にぃ♪」
理解不能だがまひるはまるで褒められた様に上機嫌な顔になった。
「アキーロ! 何でマヒルだけにゆーですか!? 自分だって女の子なのに口の利き方らんぼーですよ! 自分も叱りやがれですよっ!」
「ええぇっ!?」
「へーんだ! まひるの方があんたなんかよりずーっと女らしいモンねーっだ!」
「ブニャ~~ッ!! アキーロ自分にかわいーって言ってたですよ! 猫くらいだって!」
またもキャットファイトが始まってしまう。戦う女性は美しい、って……ホントか? どこのバカが言い出したんだろう? 見ても全然嬉しくないぞ、コレ。
「……じゃ、モテモテみたいだから、あとは任せてあたしは帰ろっかな?」
そう言って優乃先輩が立ち上がってしまう。
「え!? 帰っちゃうんですか!? 優乃先輩!」
俺が思わずその背中にそう言うと、彼女はぴく、と動きを止め、ゆっくりと振り返る。
「ええ、ただの先輩でただの友達であるところのわたくし、久住優乃は帰ります……戸山後輩」
こ、怖え……笑ってるのに怖え。
背後からゴゴゴゴ……なんて擬音が聞こえてきそうだ。なんて感想を俺が抱いたその時、いきなり彼女が破顔一笑した。
「ふふ、うそうそ。ちょっとイジワルしてみただけ」
「ゆ、優乃先輩……」
「コラ。怒ってはいないけど、少しは傷ついてるんだぞ? その呼び方」
「ゆ、優乃……さん」
「ん。よろしい」
そう言って彼女は微笑んでくれた。ああ、まだここには平穏が残っていた。よかった。
「ソレに……ここで帰っちゃ彼女らの思うツボだし」
「は?」
「何でもない! ソレより秋くん、さっきからいっぱい汗かいたでしょ? 冷える前に拭いちゃお?」
そう言って彼女が俺の上着に手を掛ける。え! コレ現実かしら? 夢かしら? ソレとも何かのエロゲーかしら? 優乃先輩ルート?
「あ、だったらまひるがやりますっ!」
「自分がやるですよっ!」
取っ組み合ってた二人がミサイルの如く飛び掛って来て、俺を脱がせに掛かる。
「ちょ、やめ、マジでやめて!」
俺は半ば本気で叫び声を上げた。しかしソレはこの女の子三人にひん剥かれるという状況に対して嫌悪感を覚えたからではない。
むしろこの状況は嬉しい。今まで幾多の何故かモテちゃって色んな女の子の間をフラフラして困ってる主人公を見て、みんな『本当はまんざらでもねーんだろうがっ! 死ね!』と思ったこと、あるだろ?
俺もだ。
だから俺はヤツらとは違う。彼らを代表して言わせてもらおう。この状況は、最高ですっ!! ハーレムルート万歳!
だからこそ、やばいことになったのだ。
言い訳させてもらえるなら、俺は寝起きだったんだ。
おまけに怪我をして本能的に生命の危機を感じていたのもそこに含ませてもらえれば幸いだ。つまり、アレなところがアレな感じになってきちゃっていたのだ。アサルトバスターがスタンダップトゥーザビクトリーしちゃったのだ。
ハーレム系主人公は「勃起しちゃったからちょっと離れてくんねーかなぁ?」とか絶対言わないだろうな。
さて、覚えているでしょうか? 俺は、リトライに取り掛かる前に、リライの必殺パンチによって、あいつのあいつを負傷していたことを……。
つまりだ。この状況は天国でありつつも、同時に地獄だったのだ。ヤツに殺人的な痛みが迸る!
「あふっ! あふぅっ!」
そう呻きながら、俺は陸に打ち上げられた魚の様に身体を痙攣させた。
声も出やしない。だってのに女共はここぞとばかりに俺の上着を取っ払ってしまう。レイプじゃね、コレ?
「つーか、何で秋にぃ、股間押さえてんの?」
「え? あ……本当だ」
「あ、そーですよ! アキーロ、股間に怪我してるですよ。自分のせーで」
『……え?』
訝しげな二人の声が聞こえる……やめろ……! リライ……!
「自分が、その……お風呂一緒に入った時に、強くコスり過ぎて……ソレで、真っ白になって、なんやかんやで怪我したですよ」
『…………』
……リライ。俺に恨みでもあるのか? せめてなんやかんやを説明しろぉお……!
「あ、あと、肩にも怪我してるですよ……ソレも自分のせーですよ」
「……あ、ホントだ」
「……歯形がある、ね」
二人の抑揚のない声が聞こえる。こちらの角度からは逆光気味で表情は窺えない。
「ソレも……昨夜アキーロのベッドに二人で入ってて、アキーロが何か色々優しくしてくれてたら……自分、気づかねー内に噛みついちゃったらしーですよ……覚えてないけど」
「…………」
「…………」
「…………」
「……ふへ? どーしたですか?」
……リライ。お前、天才じゃね?
コレだけ誤解を招きやすいアレンジができるなんて。わざとじゃなかったら奇跡だよね。コレで誤解しなかったら、ソレこそ奇跡だよね。
「あ、でも、お風呂にもベッドにも、自分が勝手に入ってっただけでアキーロわ――」
もうやめてくれ! 声の出せない俺は、何のフォローにもなってないリライの説明を止めるべく、額に乗っかっていた氷入りのビニール袋を投げ付けた。
しかし、熱で朦朧としていたせいか、元々ノーコンだったせいか、ソレは予測軌道を外れ、リライの着てるシャツの背中側に入り込んだ。
「わっきゃ! つめてーですよ!」
リライが叫び声を上げたのと時を同じくして、二つの殺気が俺に向けられてるのに気づいた。
「秋にぃ……」
「秋くん……」
「アキーロっ!」
うげっ!! やべ、死ぬ! 逃げ――
「死ねっ!」
「最低っ!」
「何しやがるですかっ!」
ボコベキグシャ!! と、俺の顔面に三発の打撃が打ち込まれた。今ほど無痛状態が欲しいと思った時はない……。
「見損なったよ! 口では軽薄だけど、誠実な人だと思ってたのに!」
「うっすらオタクっぽいって気づいてたけど、まさか妹に手を出すなんて!」
モノ凄い言われ様だ。特に優乃先輩は最早別人格と言って差し支えない激昂っぷりだ。
「ち、ちが……う」
「ふへ……大丈夫ですか? アキーロ」
ゾンビの如く身体をびっくんびっくん痙攣させる俺に声を掛けるリライ。お前のせいだろ!
『……帰る』
そう言って二人が立ち上がり、玄関に向けて歩いて行ってしまう。何とかあとを追おうと、床に手を付いて立ち上がりかけた時、まひるが投げ付けてきたバッグに触れて、俺は気づいた。
バッグからは二組のグラブと軟式のボールが覗いている。俺と遊ぶつもりで持って来たんだ。
「……待ってくれ、二人共」
『……何?』
超不機嫌な声で二人が振り返る。
「いや、その……聞いてください。今のはリライの説明が奇跡的と言ってもいい程に誤解を招きやすいモノだっただけで、キミ達が考えている様な事実はありません。神に誓って」
「…………」
全部が嘘ってワケでもないけど。事故なんだ。過失なんだ。
「……まひる。コレ、キャッチボールしようって、持って来てくれたんだろ?」
「……まあ」
「ありがとう。俺も久し振りにやりたいけど、さすがにちょっと無理だ」
「……だから?」
「……だから、リライと遊んでやってくれないか? できれば友達になってやって欲しい。こいつ、本当にこっち来たばかりで、まだ友達いないし、何も知らないんだよ」
「……ふへ?」
言われた本人は、ワケが分かっていないらしく、首を傾げるいつものポーズだ。
「えぇ? ……まあ、秋にぃがそう言うんなら、いいけど」
「本当か? ありがとう!」
「でも! 本当に本当なの? その……変なことしてないって」
「情けない話だが本当だ。俺には信じてくれと言うことしかできない」
うーん。自分で言ってて情けないことこの上ない。だけどマジだ。
「……分かった。そんじゃ、えーっと、リライ」
「ふへっ!? な、何ですよ!」
いきなりまひるに名前を呼ばれて、リライが身構える。
「キャッチボールで決着つけよーか。表に出な!」
「の、のの、望むところですよ!」
どういう顔をしていいのか分からないのだろう。リライは戸惑いながらそう答えた。
「仲良くしろよ? お前らも従姉妹ってことになるんだから」
「……いとこ?」
「そうだぞリライ。まひるお姉ちゃんってことになるな。まひる、ちゃんと面倒見てくれな」
『……お姉ちゃん』
リライとまひるの双方が噛み締める様に繰り返す。
「……よーし! じゃあまひるお姉ちゃんが遊んでやるよ! 付いて来な、リライ!」
「の、望むところですよ!」
そう言って笑顔のまひると、困惑顔のリライがバタバタと玄関に走って行く。仲良くやってくれるといいんだが。
きっと大丈夫だろう。何となくまひるの心境が分かる。彼女が今、初めて自分より年下の親戚と遊ぶことになったあの時の俺と同じ気持ちなら。
「……嬉しそうな顔」
ずっと無言だった優乃先輩が、俺の顔を覗き込んでいた。
「え! 俺、そんな顔してました?」
「してた」
そう言われた俺は、慌てて視線を逸らして、両手で顔を覆った。
「……で? あたしには?」
「……あ」
そう言われて向き直ると、彼女は唇を尖らせながら何か言いたそうな顔でこちらを見ていた。
「そ、その、優乃先輩には本当に色々な迷惑を掛けてしまって……さっきのは、本当に誤解で」
「……違う」
「……え?」
「……ソレはもう分かってるよ。あたしには、どうして欲しい?」
「あ……」
そこまで言って、先輩はやっと笑顔になった。少しテレた様な、可愛い笑顔。俺のツボにドストライクな、いつもの彼女だ。
「え、えーと、二人がうまくやってるか、見ておいて欲しい、のと……」
「うん、分かった。あとで行くよ……のと?」
「汗を拭くの、続きやって欲しい、かも」
「うん、分かった。背中向けて待ってて」
言われた通りにして待ってると、彼女が蒸しタオルを持って帰って来た。俺が寝てる時から用意してあったんだ……。
「熱くない?」
「あったかくて、ちょうどいい……です」
「そう、よかった」
そう言って優乃先輩が身体を拭いてくれた。何か妙に心地よくて、穏やかな時間だった。
「他には? 何かある?」
「何か……あ」
「何?」
「お、お腹空いたなーって。あ! でも口の中切ってるから食べれない! ごめん、やっぱり」
「うん、でもあたしプリンとか、フルーツゼリー持って来てるよ」
「あ……」
「食べたい?」
そう言って彼女がバッグから様々な色と形のゼリーを取り出す。彼女の用意周到さと、その気遣いに俺は感激してしまった。
「あ、はい。頂きます! ありがとう、優乃さん!」
「ん! ちょっと待った」
そう言って待ったを掛けてきたと思うと、彼女はやんわりと俺の身体を押して、ベッドに横になるように促してくる。
「え?」
「秋くんは、怪我人。あたし、看病する人。おっけー?」
そうゆっくり言い聞かせる様に彼女は俺と自分を交互に指差して、ゼリーの蓋を開ける。
こ、コレはまさか……!
「はい、あーん」
「…………」
ぐはああぁぁっ! 超テレくせー! しかし、彼女の気遣いを無下にするワケには……!
「ホラ、あーん」
いや、違う。
コレ、わざとだ。気が付いて見てみれば、優乃先輩はいつもの、恥ずかしがる俺の反応を楽しむ様な少しイジワルな笑みを浮かべていた。
俺の一番好きな顔だ。
「あ、あーん」
「はい、よろしい」
彼女がそう言って微笑んだ時、表からバカでかい声が聞こえてきた。
《コラー! ヘタクソ! どこ狙ってんの!》
《ノーと言えるバカわツメを隠すですよ!》
《全然違う! ここ! ここ狙って投げるの!》
《はいですよっ!》
思わず俺は笑ってしまった。優乃先輩も優しい笑顔を浮かべている。
……この人達を守る為なら、俺はどんなことでもする。
俺という男は単品じゃただの金なし、職なしの童貞で、鈍感で、ノーと言えなくて、カッコつけたがりで決めたがりで、そのくせ自分で言った家訓を忘れてしまうようなロクでなしだ。
だけど、俺には偶然にももたらされた奇跡、『後悔と向き合い、浄化する力』がある。
コレに関してだけは、絶対に取りこぼさない。絶対に救ってみせる。
世界中の人なんてのは到底無理な話だが、俺の手の届く範囲の人間だけでも救えなくて何が男か。
そう。コレからも俺の人生に付きまとうソレは、死後の世界より遣わされた『執行者』リライと、元罪人である『罪魂の救済者』戸山秋色の織り成す奇跡。
ちょっと気取った、中二な名前を付けるんなら……『リライとトライ』。そんなとこだ。
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