第49話 49日

今日は父親の49日。


朝からお寺で経をあげてもらい、お墓参りをし、それで終わりだ。


服喪の期間を終えて、明日から忌明けとなる。


「あの人は気の小さい人で、用心深く生きていたのに、


タバコだけは止められなくて肺がんで死んだんだから、本望でしょ」


母はさばさばした表情で、そういって笑った。


しかし母は、まるで父を弔うように火のついたタバコを香炉に立てた。


その日、家が火事になった。


服喪の期間を終えたら、家焼けとなった。


母は豪快な人で、小さなことは気にしなかったため、


タバコの火をそのままにしておいたようで、火事で死んだ。


きっと本望だったろう。


そして我が家は、また服喪となった。

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