第20話お金持ちもジャンクフードがお好き

上手く誘えると良いんだけど。


しかし、想像以上にウケたわね。インスタントなのに。

ジャンクフードとかってお金持ちにとって衝撃の味なのねぇ。


ここでグレースちゃんの意外な一面を見せて後は誕生日パーティーには気合い入れてメイクさせて頂きます!っと。

そんな事を考えながらクッキングアプリを見てラーメン用に焼豚を作ってみた。

フライパンでも出来るのねぇ。


後は上手く連れて来られるか待つとしましょ。



・・・・・・・・・・・


朝の教室。アンディーはまだ来て居ない。

最後にアンディーを誘ったのって何時だろう。

ジュリエットとの関係を怪しんでからは強引な事してたけど。

裁判以降は誘って無いなぁ。


「おはよう。アンディー。」

「おはよう。グレース。」

最近、本当にこの程度しか話していない。

「あの。今日、放課後暇?」

そう尋ねる声は普段より小さかった。

何か誘うのドキドキする。


「うん・・・。」

アンディーは私の声に合わせる様に小さく頷いた。

「家に来て欲しい。お願い。お願いします!!」

「家に?」

ちょっとだけ躊躇した顔。でも、解ったと言ってくれた。


あー。ホッとしたわー!!


後は放課後を待つとしよう。



・・・・・・・・・・・


放課後。


我が家に招待なんて誕生日パーティー以来だ。

と言うか婚約者なのにお互いの家に行く事も殆ど無いしデートも殆ど無い。


そう考えるとアリスねーさんが言う様に私達ってまだ普通のお付き合いすらしてない感じなのかしら。


アンディーも勿論、自分の家の車で我が家にやって来た。


「グレースの家。久しぶりだね。」

アンディーが車を降りてそう言った。

「うん。今日ね!誕生日の前祝いをしたいの!」


「前祝い?前祝い。そっか。うん。ありがとう。」

アンディーは少し驚いた顔で私の顔を見てクスっと笑った。


「口に合うか解らないけど!私が作るの。食べた事ないでしょ?ラーメンってやつ。」

ふふっ何か頑張る気満々になってきた。

「ラーメン?って何?」

「まあまあ。お楽しみよ!」

アンディーをダイニングルームに案内して待って貰う事にした。


「直ぐ準備するわ!待っててね!」

「うん。解った。」

母もまだ帰宅してなかったから好都合。

昨日は驚きながらも食べてくれたけどアンディーを招待したとなると別。もっときちんとしたおもてなしをしろと言われる筈だ。


急いでキッチンに向かうとアリスねーさんがスタンバイしていた。

「お帰りなさい。上手く誘えたのね?」

「バッチリよ!さあ!頑張る!」


小鍋にお湯を沸かしてと。

ちょっとこの茹でる作業が熱いのよね。

料理人達はこの熱さに耐えれるのが凄いわ。そう思うと日頃の料理に対して感謝したくなる。


「やっぱり熱いわ。」

でも、頑張る。

「これは慣れよね。良し、ちょっと今日は固めに茹でましょ。火を止めて。」

少し解れたくらいで言われた通りに火を止めた。

しかし、このスープ凄く美味しいのよね。お湯に混ぜるだけなのに。今まで食べた事ない味なのに美味しいの。


「これ。作ったの。上に乗せて。」

「肉?ハム?」

アリスねーさんが用意してくれていたハムみたいな物はチャーシューと言うらしい。


そして、完成しました!


「行ってらっしゃい!早く食べないと伸びるから。」

アリスねーさんに見送られお盆に乗せてダイニングルームへ戻った。


「お待たせしました。」

意を決してアンディーの前にラーメンを置いた。


「これがラーメン?グレースが作ったの?」

「はい!頑張ったわ!」

簡単だったけど事実だし。


アンディーは初めて見るラーメンの匂いを先ず嗅いだ。

「あっ。初めて嗅ぐ感じがする。結構、良い匂いするね。」

そう言って先ずスープをスプーンで掬って飲んでくれた。


ごくん・・・。

「・・・。」

反応が・・・。ダメだったかしら?


「お・・・美味しい・・・。え?グレースが作ったの?」

そんなに驚く?ってくらいの顔だけど嬉しくて思わずクスクスと笑ってしまった。

「そうよ。練習したの。」


「そっか。スープパスタ?っぽいけど変わった味で。でも、美味しい。」

麺をチュルっと食べてまたうんうん。と頷く。


「やっぱり初めて食べる味。」

最初は恐る恐るだったのに。そう言ってスープをもう一度口にして麺もモグモグと勢いよく食べ始めた。


アリスねーさんが男ってこう言う食べ物、絶対好きよ!と言ってた。

本当だ。


「なんと言うかさ。高級では無い。そう言ったら失礼か。でも、凄く美味しい。」

素直な意見だと思う。私も高級だとは思えないけど不思議と食が進んだ。


「このハム?も美味しい。味付けが初めての味だけど。これ好きだな。」


アンディーが褒めてくれてる・・。


嬉しい。あぁ。手作りってこれが嬉しいのか。

お金をかけたプレゼントを喜んで貰うのとはまた違う喜び?


作って良かったと思える気持ちが心をホワンと温かくした。


「ご馳走様でした。グレース。凄いね。びっくりしたよ!」

アンディーはもう食べ終わって水をゴクッと飲んでそう言った。


「ありがとう。褒めて貰えて嬉しい。」

本当に嬉しい。


「本当!美味しかった。初めて食べたんだけど。うん。ありがとう。」

アンディーは少し照れ気味に。


「前祝い。ありがとう。本当に嬉しいよ。」

「私も食べて貰えて良かった。」

お互い、何か見詰め合うと照れる。

照れ笑いしか出て来ない。


「えっと。また良かったら何か食べに来たいな。・・・ダメかな?」

「良いに決まってるじゃない!」

そう言うとアンディーは嬉しそうだけど。私、後は何も作れないわぁ。アリスねーさんにまた習わなきゃ。


「そろそろ帰らないとな。本当にありがとう。美味しかった。」

「うん。また来てね。」

アンディーを玄関まで見送る。


少しだけ。多分、進展したと思う!!


アンディーを乗せた車が見えなくなった頃。

「上手くいったじゃなぁい!」

うふふふふと笑いながら背後にアリスねーさん。

「びっくりした!もー!驚かさないでよ!」

私もそう言いつつ笑いが零れる。


「美味しいって言って貰えた!」

「でしょ?やっぱりそうよねぇ。」

アリスねーさんは満足そうにニヤっとしてウインク。


「また、何か教えて。また食べたいって言われたの!!」

「そりゃ、進展しまくりねぇ。」


私、多分。婚約者スタートラインから1歩前進した気がする。

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