第3話断罪裁判

いよいよか。

ふぅ・・・と、車の中で溜息をついた。

それにしても。今朝はびっくりした。突然やって来たメイキャップアーティストと名乗るアリスねーさん。


オネェよね?多分。

凄く話しやすくて、今まで私が思っていてモヤモヤしていた事をスッキリさせてくれた。こんなに他人に自分の事を話したの初めてだったな。

沢山、助言も貰えたし。


裁判。どうなっても頑張ろう。


イジメた私は確かに悪い。


でも!!あの女は許せない。

私の7歳からの婚約者アンディー。私と同じ元公爵家の長男。

まあ、親同士が決めた様なものだけど。


私は好き・・・だった。


いや。今も。好き。


親には言えていないが本人からは遠回しに婚約解消しないか?と言われた。


それもこれも!!!


ジュリエット・ホワイト!!

庶民の癖に我が校に特待で入学して来た優等生。

毎年1人から2人の庶民の特待生は居るけれど。

あれは反則よ・・・。

小学校からお金持ちしか通えない私立エリザベート学院に高校から入学してきた異端児ジュリエットは確かに頭も良く。とにかく顔が良く・・・。

男性達は彼女に入学式の時に魅了されていた。

アンディーだけじゃない。

子供の頃から仲良かったローガン、エドワード、レオまでも!ついでに生徒会長もだ。

金持ちから優先してお近付きになったとしか思えない!


「お嬢様?グレース様?着きましたよ。」

運転手のルカが優しく声を掛けてきて我に返った。


「あっ。そうね。行って・・来ます。」

「お嬢様!大丈夫ですよ。今日のお嬢様は一段とお綺麗です!」

ルカには今日の裁判の事は1番最初に話した。

昨日、両親には彼から伝えて貰った・・。自分で言うのが怖くて。


「ありがとう!大丈夫!アリスねーさんも力になってくれたし!」

ルカに微笑んで手を振り学校の校門を潜った。


私の裁判が決まった途端、取り巻いてた友達が離れて行った。

一緒にイジメてた癖に!


あれ?様子がおかしい。

裁判が決まる前ともまた違う。裁判が決まってからのコソコソとした陰口とも違う。


めっちゃ見られてる?!


目が合うと顔を赤らめて逸らす男子。


おや?このメイクのせいかな?


まあ、いいや。早く裁判終わらせて謹慎でも退学でも食らってやろう。

そう思えるくらい私の心は落ち着いてきていた。


私に共感してくれたアリスねーさん。何だかそんな人が1人居るだけで、味方が居ると言う事がこんなにもスッキリさせるなんてね。


裁判は講堂で行われる。

悪い事をしたら裁かれる。これが普通の学校だと思っていたのに。

普通じゃ無いのか・・・。



そして、裁判が始まった。

階級的にお金持ちの生徒が100人程この裁判を傍聴しに来ている。

全校生徒では無い。

そして、被害者?のジュリエット・ホワイト。


生徒会長が話を始めた。

「被告人グレース・ベイリー。貴女は被害者ジュリエット・ホワイトに対してイジメを行いました。」

質問も無しの一方的な決めつけ。

裁判官の様に生徒会長や役員が話を進める。


この裁判は入学した時に別の生徒が受けていたのを見た事ある。

弁護士なんて居ない。生徒会によって話が進められて話も聞かずその人は退学処分された。


「判決を言い渡します。」

そうこんな感じで。

でも!私は・・・。やる!


「意義あり!私は確かにイジメを行ないました。でも、きちんとした理由があります。」

えーと。俯いて上目遣いだったわよね・・・。本当に効くのかしら。

そう思いながらも私はアリスねーさんに言われた通りに生徒会長を見詰めた。


「・・・・・。えーと・・・。」

明らかに生徒会長の顔は動揺していて顔は此方を見ているけれど視線は逸らされた。


「何か・・・。話があるのですか?」

聞いてくれる?!嘘ぉぉ!こんな異例な事が!?


私は経緯を話し始めた。


「本当はイジメなんてしたくなかったんです・・・。でも、婚約者のアンディーが・・・。」

これ演技に近い。

私は本当はもっと気が強いし。

文句は沢山あるけれど。グッと堪えてアリスねーさんの言っていた事に従った。


「私の小学校からの幼なじみのローガン、レオ、エドワードも同じ様に婚約者が居るのに・・・。」

その時だった。

傍聴席から声がした。


「私も!!許せないと思ってました!!ローガンは誑かされてます!」

振り返るとローガンの婚約者のケイトだった。

ケイトとは仲は悪くは無い。良かった。此処にも味方居た。


「私も。最近、レオの行動は目に余る所がありましたわ。まあ、イジメる程ではありませんでしたけどね?」

今度はレオの婚約者ジャスミン。彼女とは今迄、疎遠・・・。


「私。グレース様は嫌いですけど。この裁判は無罪だと思いますわよ?うちのエドワードもジュリエットに最近デートに誘われて迷惑しておりましたの。」

最後に立ち上がったのは犬猿の仲のお嬢様、元公爵家のジェニファーだ。


嘘・・・。ジェニファーが味方に着くとは思わなかった。


私達4人は家柄が似ていて常にライバル関係にあった。

だからお互いの婚約者の事を相談する事も無く今に至っている。



「私、そんな!!嘘です!私は誑かしたりしてません!デートも私は誘って居ませんし。」

ジュリエットが立ち上がり生徒会長に半泣きで訴えた。

あー。生徒会長も手を出されてたね。


でも、生徒会長はジュリエットを宥めながら座らせた。


「少し休廷します!」

そう言われて場は静まった。


恐らく決まっていた判決が変わるんだ。

生徒会長と役員達が話し合いを始めた。


チラっと傍聴席を見るとジェニファーがニヤっと微笑んだ。

私はペコっと頭を下げた。

私達がこんな態度を取り合うのも初めてだと思う。


何か・・・今日は初めてな事ばかりだ。


「判決を言い渡します。」

生徒会長がうっうん。と咳払いをした。


「判決は無罪!!但し。今度またイジメを行った場合は謹慎処分としますので。これは執行猶予と思って下さい。」


うわぁ・・・。勝ったよ私。

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