第70話
ぴょん太がドアを押すと、静かにスーッと開きました。
開いたところから、お外のにおいがしてきます。
僕のお家の周りには大きな木が沢山あるので、葉っぱのにおいかな?木のにおいかな?
とにかく自然!って感じのにおいがします。
ぴょん太が先にちょこちょこと歩いてお外に出たので、僕も同じようにぴょん太の可愛い歩き方を真似しながら、ゆっくりとお外に出ました。
急いで歩いて転けてしまって、怪我でもしたら大変ですからね。
僕は慎重派なんです!
えっへん!
バルコニーに出た僕の目には、大きいお月さまと小さなお月さまが仲良く寄り添っている姿が最初に見えました。
お外に出ているからか、お部屋よりもさらに明るく光っています。
「ふおぉー!」
思わず感嘆の声が出ました。
次に僕の目に映ったのは、夜空いっぱいのお星さまのショーです!
お空中にピカピカと可愛く光っている沢山のお星さま達。
お月さま達に比べるとかなり小さいですが、それでも懸命にチカチカ光っているのを見ると、思わず頑張れー!って応援したくなっちゃいます。
それぐらいチカチカが可愛いのです。
お外の爽やかなにおいとお星さま達のショー。そしてお月さま達の優しい光。
僕はスゥーッと、お外の空気を胸いっぱい吸いました。
うむ。感無量です!
『ふふふっ。ご満足されましたか?』
僕の様子を見たぴょん太が笑いながら言いました。
うむ。満足、満足です。
「ぴょん太ー! あいがとうでしゅ!
とってもとっても満じょくでしゅ!
お星しゃま、キアキアー。みんにゃで交互にチッカチカ!
おちゅきしゃま、仲良くしょろってぴっかりんこー。しゅべてをやしゃちくちゅちゅむ、ひっかりでしゅー。
夜の光の天体ショー。みんにゃでにゃかよくおしょらを見上げたら、ニッコリなりまちゅ天体ショー。
お星しゃまもおちゅきしゃまもあいがとうー。いちゅもみんにゃを見守って、やしゃちい光に感謝でしゅー。
やしゃちい光に照りゃしゃれると、夜のお道も怖くにゃいー。あいがとうー、あいがとうー」
僕は感謝の気持ちを込めて、お歌と踊りをお月さま達とお星さま達に捧げました。
お星さまのところはちゃんと両手を上に上げてから、手のひらをひらひらとひっくり返しましたよ。
お月さまのところは腰をふりんっ!として、体全体でお月さまを表現しました!
歌い、踊り終わった僕の耳に、ポチポチポチッと可愛い音が聞こえてきます。
ぴょん太が可愛いお手手で拍手をしてくれていました。
そういえば、一人観客がいましたね……。
僕は、溢れ出るパッションのままに歌って踊りましたから、ぴょん太の事は頭になかったのです。
だから、拍手をされるとちょっぴり恥ずかしいのです……。
『とっても可愛らしくて素晴らしかったです!
さすがユーリ様ですねっ! 天井の星々にも負けない輝きっ! 月達をもうっとりとさせる歌声っ!
結界を張っていなければ、邸中の人間が観覧に来ていたと思いますよ!』
ぴょん太が満面の笑顔で言ってくれましたが、かなり大袈裟なのです。
僕が歌って踊っても、誰も見に来ませんよ?
だって僕のお歌も踊りも、洗練されたものではありませんからね。
素人の歌と踊りなのですよ。
今回は感謝の気持ちを捧げる為に、歌って踊っただけですからね。
感謝の気持ちが、お月さまとお星さま達に伝われば十分なのです。
──伝わりましたよね……?
僕、ちょっと不安になってきました。
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