第66話

 ぴょん太がおねむのお部屋のドアをそーっと開けました。

そしてそろーっと歩いていきます。

僕も同じように後ろについて、そろーっと歩きました。

 おねむのお部屋の次は、何時もお遊びするお部屋です。

今は真っ暗で殆ど見えません。でも何故か、ぴょん太の姿だけはうっすらとだけど、はっきり見えます。

不思議です。

 僕はちっちゃなお声でぴょん太に聞いてみました。


「ぴょん太のしゅがちゃ、何故見えるでしゅ?」

『ユーリ様が見失わないように、ほんのり光を纏っているのですよ』


 光をまとう……?

まとうって何ですか?

 身につけるって事だよ。あー……洋服を着てると思えばいいよ。と、記憶さん。

お洋服?

 ふぉっ!?

ぴょん太、光のお洋服を着てるのですかっ!凄いです!凄いです!僕も着てみたいです!


「ぴょん太、光のお洋服しゅごいでしゅねー! 僕も着てみたいでしゅっ!」

『えっ? 洋服?

 ……ああっ! これは洋服じゃなくってですね……。

 ううっ……。すっごいキラキラしたお目目で見つめられてるから、否定したくても出来ないジレンマッ!

 ユーリ様、可愛すぎですっ!』


 むぅ。

ぴょん太また、途中からボソボソおしゃべりになりました。

あと、ボソボソおしゃべりになってから、体をくねくねしてて変です。


「ぴょん太、お洋服ー!」

『えーっと、あのですね、これはお洋服じゃないのですよ』

「じゃぁ、何で光ってりゅのでしゅ?」

『それは私が光の……って言ってもお分かりにならないだろうし……。どうすれば……』


 またまたぴょん太がちっちゃいお声でボソボソ言ってます。

ボソボソお声は聞こえないんですよー。ぴょん太、知らないのですか?

 仕方ないなー。時間ないしね、説明してあげるよ。ぴょん太、これは貸しだからねー。と記憶さん。

うにゅ?説明、ですか?

 そう、説明だよ。ぴょん太はねー、夜になるとピカピカ光るお星様をパクパク沢山食べたから、いつでも自由に夜に光れるようになったんだよ。と、記憶さん。

 お星様を食べた……?

ふえ?お星様は食べられるのですか?それに、どうやってお空にあるお星様を採ってくるのですか?

 んー。そこはぬいぐるみ種の秘密だから分からないねー。秘密だからぴょん太がお星様を食べた事も誰にも言ってはダメだよ。秘密がバレるとぴょん太の耳が抜けるからねー。と記憶さん。

 ふぉっ!?

お耳が抜けてしまうのは大変です!ぴょん太から可愛いお耳がなくなっちゃうと、頭さんが寂しい寂しいとなっちゃいます!

そしてあの可愛いお耳がなくなるのは、世界の損失です!

 だから僕は秘密を死守しますっ!

……でも、僕もお星様を食べたら光る事が出来ると思ったのに、残念です。本当にちょこーっと残念です。本当ですよ?

 今はそんな事より、お家探検するんだよね?早く行かないと時間なくなるよー。と記憶さんから注意されて、あわわっ!てなりました。


「ぴょん太、時間にゃくにゃりゅでしゅよー。早くお部屋出ましゅよー」


 僕はまだボソボソ言ってるぴょん太の背中を、ツンツンとつついて言いました。

これならぴょん太も、ボソボソやめてくれると思うのです。


『えっ? あの光の事は……』

「ぴょん太のお耳のために、僕はひみちゅ守るでしゅっ! ふんむっ!」

『え? 秘密……? え?』

「ぴょん太! 記憶さんが時間にゃくにゃりゅ言ってたでしゅ! お部屋でりゅでしゅよ!」

『え? ええ……? あ、はい。行きましょうか』

「サササッと行くでしゅ!」

『はーい。このお部屋を出ると廊下になりますからね。慎重に行きましょうね』

「あいっ! しんちょーに行きましゅ!」


 ぴょん太がそーっとドアを開けました。そしてお顔をちょこっと出して、左右の確認をしてます。

確認が終わったのか、廊下へと出ていきました。

 僕もぴょん太の後に続きます。

ここからは更にそろーっと動かないといけません。

みんなおねむしてますからね、起こしちゃダメなのです。

 ふふふっ。

今度こそ、たんけんしゅっぱーつ!なのです。

わくわくどきどきなのです!

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