お昼ごはんは三人で
ピンポーン
「えっ!?」
お姉ちゃん、事件です! こんな女の子ひとり暮らしの部屋に侵入者(来訪者)です! うちのマンション(アパート)にはオートロックなんてものはついてません。つまり、犯人はそのドアの向こうにいます! しかも今わたしとお姉ちゃんはキッチンでお料理中なので隙だらけです! 玄関とはほんの一、二メートルの距離です!
「おっ、お姉ちゃん! どうしよう!」
するとお姉ちゃんは、どこかから素早くスマホを取り出しました! そしてわたしに言います!
「あらぁ、涼太郎だわ!」
「へっ?」
「連絡、くれてたみたい」
そう言って、お姉ちゃんは玄関に向かいます。
「そっ、そうなの……そっか……な、なあんだ、焦っちゃった……って!」
えええっ!? うそうそ! 婚約者さん、もう着いちゃったんですか? 早くないですか!? そんな、わたし、まだお化粧してませんよ!? 5000円のアイライナー、まだ使ってません! というかそもそも、心の準備ができてません! そんなそんな、そんなーっ!
ガチャ
「ぎゃひー!」
「あ、こんちは!」
「あっあっ」
「妹さんだね、初めまして!」
「ぎゃひー!」
「海香どうしたのさっきから! ああ涼太郎ごめんなさい、連絡くれてたの、全然気づかなくて」
涼太郎さんとのファーストコンタクトはこんな感じになってしまいました。
だいぶ落ち込みましたが、おかげで冷静さを取り戻しました。
「涼太郎、お昼はもう食べたの?」
「いや、まだだけど」
「だったらちょうどいいわ! 一緒に食べましょう!」
「え、いいの?」「えっ。いいんですか?」
わたしと会って五分でわたしなんかの料理を食べることになってしまって大変申し訳ない気がしましたが、涼太郎さんのお昼どうするの問題はこれで解決です。お皿をもう一枚出して盛り分けていきます。どうもすみません……。
・涼太郎さん 大盛り 1.5倍
・お姉ちゃん 普通盛り 1.0倍
・わたし 女の子盛り 0.7倍
涼太郎さんはわりとがっちり体型です。いいですね。わたしは何を言ってるんでしょう。と、ともかく、男の人ですからいっぱい食べますよね! ということで1.5倍の大盛りです。お姉ちゃんは普通盛りです。そしてわたしは、猫を被って女の子盛りです。ダウンしちゃったイメージのアップアップを図ります。多めに作っておいてよかったです……!
「「「いただきます!」」」
ちょうど12時になったとこでした。熱いうちに召し上がれです。
「あ、すごい! まるでラーメンを食べているかのようだ!」
「本当ね! これは一体どういうことなのから?」
「ふっふっふ……」
鶏がらのダシにメンマの香り、それにコショウのアクセントが加われば、それはもうラーメンなのです! 今回は塩ラーメン風です。パスタも小麦粉なので中華麺に近いです。茹でる時に重曹も入れると、もっとそれっぽくなる、なんて噂もあります。
もやしもベーコンもいい味出してます。この二つは万能ですね。ゆで卵がこれまた合うんです。どのタイミングで食べるかは人それぞれですが、どのタイミングで食べてもおいしいです!
「涼太郎さん、このゆで卵、お姉ちゃんが茹でたんですよ!」
「あ、すごい! 黄身がちゃんと真ん中だし、絶妙なオレンジ色の半熟だ!」
「うふふふふふふ」
「いたっ! たっ! スミ子痛いって!」
しかもですね、このパスタ形式だと、具材それぞれの食感もつぶさに味わえて、普通のラーメンとはまた違った楽しみがあるのです。これは大きな強みです。なので、なすやピーマンなんかの夏野菜をごろっと使っても、これはいけちゃいます。あ、そういえばお姉ちゃん、ピーマン嫌いでしたよね?
「克服したわ! 涼太郎のおかげでね!」
「涼太郎さん、そんなことまでできちゃうんですか! すごいです!」
お好みで、香味づけにチューブしょうがやにんにく、もしくは葱油なんかを入れてもいいかもしれません。わたしはごま油で十分かなとも思います。
あと、塩漬けメンマの代わりに、よく瓶入りで売ってる味付けメンマ(やわらぎ)を使えば醤油ラーメンになりますし、それにそれに、中華風アレンジはなんでもおっけーです。担々麵風とか、麻婆とか、あと何でしょう、色々です。
そして、なんと! 鶏がらスープの素(顆粒)の代わりに和風だしを使って、具材も和風で攻めれば何でも和風スパゲティにできちゃいます!
つまり、色んな味付け、色んな具材で応用が利くので、ダシの研究や具材の下ごしらえのいい練習になります。結局最後は全部まぜるだけですから、パスタは楽なんです! ちょっとくらいモタモタしても、麺が溶けてぐにゅぐにゅになったりしませんし!
お姉ちゃんには、まずここから始めたらいいんじゃないかなって思ったので、今日はこれにしたんでした。ちゃんとしたイタリアンなパスタはまた別物ですので、それはまたの機会に、です! 以上!
「なるほど、そうなのね……よくわかったわ!」
お姉ちゃん思いの優秀な妹です!
「すごいね、海香ちゃん」
えへへ、えへへ。
「そういえばさ、二人、どっか似てるよね」
「そーお?」
「ほんとですか!?」
「やっぱり姉妹なんだなって。当たり前か」
すごいですね涼太郎さん! よく見てますね! 見破ってますね!
……わたし、思いました。涼太郎さん、すっごい優しい人です。お姉ちゃんを大事にしてくれそうオーラがすっごい出てます。いいな、うらやましいな、お姉ちゃん。こんないい人と出会えて……。
「それにしても涼太郎、早かったわね? 1時くらいになるって言ってたのに」
「ああうん、俺、なんか、予定より1時間早く起きちゃってさ。だったら1時間早く出発しちゃえーって」
「それって」
「スミ子に早く会いたかったから」
「言うと思った!」
ぎゃひー! 涼太郎さん! よ、よくもぬけぬけと! これはたまりません!
「おっ、おっ、おにいちゃんって、呼んでもいいですか?」
ぎゃひー! わたしってば、なななんてことを!
「いいよ、もちろん。……なんか、照れるけど」
ぎゃひー! おにいちゃん! おにいちゃん! わたし、もうお腹いっぱいです!
「「「ごちそうさまでしたー!」」」
ああ……とってもおいしいお昼ごはんでした……感無量です……。
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