田舎の夢

もし叶うなら

田舎の夢を見せてくれ


青白く痩せた土地

枯れ木のような鉄塔は

ビルよりも、高くはなかったか?


優しい柵で囲われた、底無しの肥溜めには

村八分にあった若い夫婦が沈んでいる


犬のようだった俺をいびるのは、飢えばかりではなかったはずだ

地雷のように埋まる、薄汚いふきのとう

大地のひび割れは、いずれ皮膚のように蘇るだろう


後ろから囁くような、眼前の野次

それはお前の山びこだと言ったのは

村で評判のよい藪医者だった


春風の吹かぬ村

便りの届かぬ村

郵便屋は呆け、意味のなさぬ文章をしたためる

宛名は己

死後の暮らしはどうだ

粗相など、せぬようにしていろよ


夢を見ずに寝たのでは

今日と明日が繋がってしまう

夢を見ずに寝たのでは

空想と過去が繋がってしまう


もし叶うなら

田舎の夢を見せてくれ

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