奇跡信じて

寿司焼き芋

そんな耳を疑う声が

聞こえてきた

哀愁誘うあのメロディーは

石焼き芋のもののはずなのだが


己の耳を信じるか

常識を鵜呑みにするか


頭の中で合成するその味は

およそ美味とは言いがたい

しかしこの世には

奇跡の組み合わせというものがある


眉をしかめるか

奇跡に掛けるか


息を殺し耳を澄ます

石か寿司か

蒸気の唸りぴたと止む


販売中か、店じまいか

販売中であるのなら

客の手には

何が握られているんだ


私は財布を握り締め

つっかけを蹴り飛ばさんばかりの

勢いで、玄関を飛び出した


しかし、帰宅した母に出端を挫かれる

私はその場で腰を抜かした


母はその胸に

もうもうと蒸気を立てる紙袋を

抱いていた


その紙袋には、いったい何が入っているんだ!

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