第16話

 _____「お願い…」_____……誰の声だ?それになんだろうこの感じ…無気力で、そのくせにどこか怒りに満ちている。苦しい。体に感情がついていかないような。倦怠感が離れてくれない。なんだこれ…


ジリリリリといつにも増してうるさい目覚まし時計で俺は飛び起きた。「汗すげぇな…風呂入るか。」朝風呂なんて久しぶりだ。嫌な夢を見ていた気がする。まぁ良い、今日は金曜日だ。なんでだろうなぁ、金曜日って嬉しいのに頑張るぞって気にならないんだよなぁ。どちらかと言うとやっとか…ってイメージ。まぁでも凛がいたら毎日が土曜日みたいなもんですけどね!それに…!珍しく今日は頑張ってやるかと家を出た。学校に着くといつも通り挨拶をして授業は眠る。そして呆れられながらも起こしてくれる凛。そしてここで気付く。あれ、俺頑張った…?まぁいいか。「凛、明日大丈夫だよな?」俺は確認のため聞くと彼女は「だ、大丈夫よ」と珍しく緊張していた。よし、大丈夫だ。「じゃあ今日は早めに帰るわ」と彼女に言い残すと彼女は「さようなら」と笑顔でそう言った。次の日土曜日。胸の鼓動が激しくなっているのがわかる。時計の針がいつもより遅く動いているように感じる。すると家のチャイムが家中に鳴り響く。凛だ。そしてその目的は。「えっと。上がって。」いつもは普通に話せるのになんでなんだ…「お邪魔します」と透き通った声が玄関で響く。すると家を急いで歩く音が遠くから聞こえてきた。「誰!?」と勢いよく尋ねたのはそう。母である。俺は母さんに俺の自慢の彼女を紹介すれば、友達さえろくにいない俺にかなり美人な彼女ができたと伝えたら、何か変わる。そんな気がしたのである。さて、どうなる…少しの沈黙の後に懐かしい、とても懐かしい俺の大好きだった人の優しい「おかえり」の声が静かに響くと俺と凛は咄嗟に「ただいま」そう言って笑った。

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