第10話
通話を終えると驚く程静かで、真っ白な世界だった。まるで自分以外の人間が1人として存在しないような、そんな感覚があった。「どうかしたの?」と誰かの声。俺はなにも答えず無我夢中で家に向かって走った。土砂降りの中、1人で走り続けた。「きっと玄関をくぐればまたみんながいて。そうだ!今日彼女が出来たって話そう!恥ずかしくて言えなかったけど今はすごく自慢したいんだ。」と俺は1人の少年に向かって話し続けた。家に着く。玄関をくぐる。靴を脱ぎリビングへと駆け込んだ。そこには母と兄、見知らぬ男2人。そしてずぶ濡れの弟。母は下を向いて小刻みに揺れて、兄はそっと目を閉じて座っていた。見知らぬ男は一方的に話をしている。「誰なんだよあんたら…」俺はまとまらない思考の中そんな言葉を無意識に発していた。「私達は海空警察の者です。お父様の件、大変遺憾ですが、今からご遺体の確認のため署まで御同行願えますか?」俺たち家族はただ従うことしかできなかった。「本人で間違いないです…」なにもない部屋に見慣れた顔の遺体。「なんだよこれ…」「…………」「兄貴はなんでずっと黙ってるんだよ!!」響く声。「やめなさい!!」と母の声が重なって静かに消えていく。兄貴は静かにその場を去った。最低だあの兄貴。親が死んだのに涙一つ…!俺ははっとした。「人のこと言えねぇな…」俺はなんとなくこの部屋に母と変わり果てた姿の父の2人にしてやろうと思い部屋を出た。その直後、部屋から我慢しきれなくなったような泣き声が聞こえた。クソ…。なんで親父は…。と呟くと1人の女性と女の子が目の前に立っていた。親子だろう。「なんの用ですか」俺は俯きながら聞くと女の子はそっと口を開いた。「あのね…?」
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