4.
「この度はーー」
隣にパパとママ、それから兄弟妹達がいる。兄弟が多いっていいな。私は身内だけで誕生日会をする方が好きだなあ。でも、美味しいものもいっぱい食べられるし、友達にも会えるからパーティーも悪くない、と思う。
パパの次は私の番だ。緊張しすぎて声が裏返りそう。パパに大丈夫だ、と言われマイクを持った。
「きょうはわたしのたんじょうびをいわいにきてくれてありがとうごじゃいます。どうぞたのしんでくださいっ!」
ママと一緒に考えた短い文だが、きちんと言えてよかった。今までこんな大勢の前で話すことなんてなかったから。短文でも心臓が壊れるかと思った。大きな拍手が聞こえ、ホッと息を吐くとお兄ちゃんに頑張ったな! と褒められた。お兄ちゃんはもう3回もしてるから慣れたのかな。二子も5歳になればするだろうからその時は私が褒めてあげよう。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「リオちゃん誕生日おめでとう! 私のこと覚えてるかしらぁ?」
「アリサさん! ママのしんゆーだよね! あっ、ですよね……?」
「そのままでいいのよぉ。アカネがそんなこと言ってくれてたなんて嬉しいわぁ! 私の息子、紹介していいかしら?」
アカネとは私のママの名前である。アリサさんの息子ってシオンのことだよね……?
「リオ、たんじょうびおめでとー! あと、たすけてくれてありがとう。リオ、かわいくてあぶないからこんどからはぼくがまもるね!」
「へ?」
守るってヒロインにいうセリフなはずじゃ……。
「あら、シオンくんかっこいいこと言うのね?」
「リオちゃんと出会ってからこの子リオちゃんの話しかしないのよぉ? 一目惚れしてしまったみたいねぇ」
シオンのお母さんが冗談っぽく言うとシオンの顔は真っ赤になった。えぇ、どういうこと?
「あの約束が現実になりそうねぇ。」
「そうね! でも、素敵な事だと思うわ!」
頭の中がクエスチョンマークだらけになった時アリサさんは「後でね」と言って去っていった。もちろんシオンもだ。あ、シオンのお兄ちゃんとお父さんは私のパパと私のお兄ちゃんと話をしている。リクとシオンのお兄さん、レオンは同い歳で同じクラスらしい。同じクラスの女子は毎日幸せだろうなあ。
「リオちゃん、弟がごめんね? でも、仲良くしてくれると嬉しいな。」
「はいっ!」
もちろん仲良くしますとも!! 美少年の頼みは断れないよ私には。しかも短パンの子には。でも私みんなの前で振られるんだよなあ。告白すらしていないのに。ある程度の距離感が大切って事だよね。
レオンは誕生日おめでとう、と言いシオンたちの元へ行った。この方も攻略対象である。兄弟で攻略対象っていいよね。実は私レオン様推しでした!
「リオ、俺達も食いに行こうぜ」
「うん! あいすたべたい!!」
「俺がとってやるよ」
私とお兄ちゃんはパパたちから離れ、料理が沢山並んだ机へ向かった。自分でとるんじゃなくてシェフが入れてくれるようだ。お兄ちゃん自分でアイス入れようと楽しみにしてたのに出来なくてガッカリしていた。
「リオちゃんおたんじょうびおめでとう!!」
「ありがとうモモちゃん!」
モモちゃんは私の親友だ。大人しい子だが芯のある子で実はかっこいい所もある。二条家の子で実はシオンとはいとこにあたる。シオンは最近引っ越してきたばかりなので2人に面識はない。後で紹介されるのだろう。
「おいぶす!」
え、私? リオって結構可愛い顔してると思うんだど。そうだ、モモちゃんの弟だ。なぜか、モモちゃんの弟、マサトくんに嫌われているのだ。何もしてないはずなんだけどなあ。
「マサトくん! おねえたんにそんなこといわなーで!」
「おねえたん、だいじょぶ? おねえたんかわいいのにそんなこともわからないなんて、くずだね」
「ありがとうリカ、リンも。」
リンが私に抱きつきながらマサトくんに向かってドヤ顔している。それよりその口の悪さはどうしたの!? ……お兄ちゃんだ、これは。双子とマサトくんは同じクラスだが仲は良くないらしい。マサトくんがいつも言い負かされているようだ。リンは賢いからネチネチ文句を言うだろうし、リカは思ったことをすぐ口に出してしまうから精神的に辛いだろう。ご愁傷さまです。
「ごめんね、リオちゃん。マサト、あやまって!」
「……ごめんなさい」
「いいよ。でも、ほかのこにいっちゃだめだよ~」
マサトくんは小さくうん、と返事をしふいっと顔を背けた。私に言われたことに腹が立ったのか顔を真っ赤にしている。実はマサトくん、攻略対象である。この時の悪役はモモちゃん!ーーではなく、リオである。マサトくんの初恋がリオだそうだが、今の状況的に好かれている要素は無さそうだ。マサトくんはツンデレなキャラで結構人気が高かった。キャラ投票では2位だったのだ。1位はもちろんメインヒーローのシオンである。
リンも可愛い顔をしているのだが、攻略対象ではない。弟がヒロインに騙されることがないということにほっとする。リンが攻略対象だったら悪役はリカだろうなあ。あの二人想像以上に仲がいいから。
「あっ、ママがマサトとモモのことさがしてる! またね、リオちゃん!」
「うん! マサトくんもばいばい」
「うん……」
これで実は私の事好きだったらツン多すぎるよね。ヒロインがマサトくんのことを気に入ったとしても私はモモちゃんに頼ろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます