公爵令嬢が王太子に婚約破棄され、妹を溺愛する聖騎士の兄が激怒した。
克全
第1話:婚約披露宴
私達のために、国中の貴族士族が集まってくれています。
私が王太子殿下の婚約者に選ばれるまでには、多くの困難がありました。
恐れ多い事ながら、王太子殿下は賢明な方ではありません。
日頃の行いも、色々と問題のある方なのです。
婚約者選定の期間中ですら、初心な貴族令嬢を騙して傷者にするという、恥ずべき事を四度も繰り返し、廃嫡問題さえ起こっています。
そんな王太子殿下ですから、婚約者候補にも誘いをかけていました。
「君を婚約者に選ぶから、愛を確かめたい」などと愚かな事を口にします。
もちろん私にも口にしましたが、相手になどしませんでした。
私は神に選ばれた聖女なので、婚前交渉など考えられません。
いえ、それ以前に、確実な約束もなしに契るなど、勢力争いの激しい高位貴族の間では、絶対にありえない事なのです。
いつ裏切るか分からない高位貴族にとって、神に誓いを立てる婚姻による契りは、家の命運をかけた重要な同盟締結なのです。
よく政略結婚と言いますが、一旦神に誓った結婚ですから、それを裏切る事は、神の怒りにふれ天罰が下される、後戻りの利かない同盟なのです。
それは王家との関係にも当てはめられ、私が王太子殿下と婚約すれば、実家の侯爵家が王家を裏切る事は絶対になくなるのです。
この国で一番力があるのは、私の実家、レストン公爵家です。
兄上が守護神様に選ばれて聖騎士となられ、私が守護神様に選ばれて聖女となってから、公爵領の実りは三倍となりました。
父上は賢明な方ですから、その実りを浪費したりはされません。
非常用の兵糧や救済食糧として、備蓄庫に保管されておられます。
穀物を長期保存し、価値を高めるために、醸造酒も大量に造られています。
それでも、民のが手元に置いた食糧が領内に溢れているので、王国中から多くの民が集まり、兵力と労働力を確保することができました。
私と王太子殿下の婚約が整うまでは、公爵家の分離独立の噂が絶えませんでした。
公爵家が分離独立すれば、王国の国力と軍事力は激減します。
隣国がそれを見逃すわけがないので、国内の貴族士族は戦々恐々としていました。
だからこそ国中の貴族士族が、私と王太子殿下の婚約締結に心から安堵し、こうして祝福してくれるのです。
宮廷楽士が一段と高く荘厳な音楽を奏でだしました。
いよいよ王家の方々が入室されてこられます。
そこで私と王太子殿下の婚約が発表されるのですが、嬉しさよりも諦めが強いのは、国王陛下直々に詫びてくださったからです。
「申し訳ないが、王国の民のために耐えてくれ」と言ってくださったから。
王太子殿下が一人っ子でなければ、とうに廃嫡されていたでしょう。
「国王陛下御入室!
王妃殿下御入室!
王太子殿下御入室!」
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