≪詩集≫てのひらものがたり

ねこK・T

てのひらものがたり

遠く近く揺れる青が欲しくて

波間に手を差し入れた

けれど指からは雫が落ちるばかりで


白く光るシリウスが欲しくて

夜空に手を伸ばした

けれど指先は空を掻くばかりで


開いた掌の中はいつだって

何も 何も無かった


それでも覚えている

触れた海はくすぐったくて

肌を撫でる風が冷たかったこと


いつだって世界のかけらは

掌から零れ落ちていくけれど


それでも覚えている

掌にほんの少しだけ残った 私だけの世界を

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