海原の人魚願望は

空かき混ぜる嵐に

水面は白く泡立つ

崖に吹く風は湿り

瞳へと涙を誘った


強風に乗り飛べば

海が私を包み込む


見上げる水面は白

目指し沈む底は闇

空気は吐き出して

余さず命火を消す


岩に砕け波に紛れ

この身体は溶けて

白泡になれば良い

想いだけが浮かび

海原で歌えば良い


けれど底に佇むは

人魚姫ではなくて

口開けて餌を待つ

ゆらり巨大深海魚


飲み込まれた体は

砕かれ溶かされて

最早闇すら見えず


最期抱いた想いが

海原を目指したか

歌を響かせたのか


判断する術は無い

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る