誰も彼女を理解しないとはな
時々、人間の考え方が分からなくなる。
別に心を読む魔法が使えない訳じゃない。人の心にある障壁など、簡単にこじ開けられる。
例えそれが高位の魔法使いが保護魔法を掛けた、キシュタン王国の要人でもな。
問題は、そうして手に入れた情報が私の理解の範疇を超えている事だ。
聖女・スヨミルが牢屋に入れられている、そんな情報は。
キシュタン王国の為に日々を門の保護に費やし、聖なる力を強くする為の修行も欠かさない聖女。
黄金よりも輝く金髪を靡かせながら、毎日、ひたすら門まで駆ける彼女。
辛い修行でも明るく綺麗な笑顔を絶やさない彼女が、牢屋に入れられ処刑されると聞いたのだ。
信じられない。その話が本当かどうか、スヨミルに聞かなければな。
その後、私は黒い霧に姿を変え、牢屋の中にいる彼女を探す。見つけた場所は奥の牢、厳重に管理された場所にいた。
暗く、金属の檻が冷たい牢で、彼女はそれでも気丈な振る舞いのまま座っている。
その身体が、恐怖で微かに震えているのを除けばだが。
彼女の元に舞い降り、牢屋に入れられた事を聞いてみれば、どうやら死刑は本当らしい。
念の為に彼女の心を読み取ろうとしたが、やめた。彼女は人間の中で唯一、信頼できるからな。
そうして少し悩み、私は彼女を国へ連れていく事にした。
~~~~~
牢屋に閉じ込められているから気付かなかったけど、外は夜になってた。
霧の姿で上空に飛び出して見えたのは、魔法の光で煌びやかに輝く街並み。
私が今まで、頑張って護ってきた街並みがそこにある。そして、近いうちに公開処刑される街でも。
まるで、あの時の裁判みたい。聖女も国の偉い人も、みんな煌びやかな服を着ていたわ。
だけど、その心は皆ドロドロしていたと思うの。
私に嫉妬していた聖女とか、国民にいい顔したいから魔物を絶対入れたくない国の偉い人とか。
皮肉よね。今度からこの街並みを護るのは、聖なる力を持ってると嘘を付いてる聖女なのだから。
まぁでも、魔王って意外と優しいし、魔物だって積極的に人間と敵対したい訳じゃないの。
だから魔物を敵だと決めつけ排除しなければ、案外、仲良く出来ると思うわ。
私を処刑しようとした国に、そんな事が出来るなんて思えないけどね。
「ねぇ、貴方の国ってどんな所なの?」一緒に飛んでる途中、何となく気になって魔王に聞いてみた。
『聞いた事ないか?まぁ、無理もないか。私の国は人に見つからない様に隠しているのでな。
キシュタン王国にいる魔物にも話さぬ様にしてるのだが…まぁ、お前には話しても大丈夫だろう。』
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