聖女の仕事を理解しないなら、魔王と一緒に夜逃げしますわ
アイララ
ちょっとは事情を理解してよね
キシュタン王国の門がいつも光り輝いているのは、私が魔法を掛けてるお陰。
太陽が出るか出ないかの朝早くに教会を出発して、東西南北あちこちにある門へ行く。
身体強化魔法で足を強化し、ひたすら駆けてもう大変。
昔は馬に乗って門まで行けたのに、お偉いさんが『金が掛かり過ぎる!』と大反対しちゃったの。
そのせいで、毎日の時間の大半は石畳を駆ける事に使われるのよ。
ようやく門に辿り着いたら、門に向かって聖なる光を掛け保護するの。
普通の魔物なら門を閉じれば王国に入ってこれないけど、賢い魔物なら上手にすり抜けられるでしょ?
だから私の聖なる力で入らない様にしてたの。
そんな私は今、怠惰の罪で裁判に掛けられてるけどね。
最悪な事に、私の裁判に味方はいなかった。そもそも裁判に掛けられた理由は、同じ教会の人に訴えられたから。
『あんな役立たずの聖女より、私に王国の保護を任せるべきです!』
見た目は立派な裁判所の中で、同じ教会の彼女はそう言っちゃってる。
でも、そんな事を言っていいのかしら?彼女の聖なる力なんて、聖水で誤魔化しただけじゃない。
裁判所の人はまんまと信じているけど、そんな誤魔化した力で門を守れるわけ無いでしょ。
おまけに、『それに彼女は門を護ると言いながら、魔物の侵入を許しています!』なんて言ってるし。
確かに、少しぐらいは魔物も侵入させてるわよ。吸血鬼とか人狼とかね。
だけど吸血鬼は人の血を吸わなきゃ生きていけないし、人狼なんて変身しなきゃただの人間。
人の姿のままなら、国の外にある森で生きていけないし可哀想でしょ?
そういう説明も国の偉い人にした筈なのに、結局は無視されちゃってるし。
何度も何度も説明したのよ。魔物は確かに危険だけど、完全に排除すれば逆に反撃されるわよとか。
無視され過ぎたから、最近は面倒になって説明してないけどね。
まぁ、それが原因で今になって私は裁判されちゃってるけど。
私は彼女の言う事に反論しない。だって、無駄でしょ?結果の見えてる裁判だし。
皆、私を怠惰の罪で断罪する事に賛成しちゃってるもの。同僚の聖女、国の偉い人、判決を下す人。
そして出された判決は、『国の保護する役割を怠け、魔物を侵入させた罪により死刑!』だって。
私の力なら、一匹も入れさす事なく守護が出来る。だから私は怠けているとの事。
それを断罪する為に、私は民の前で公開処刑されちゃう。だけど、その事は怖くなかった。
何故なら私を理解してくれる人がいるから。魔王という人が。
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