51.レベルリセット

「えーと、レベリセ……レベルリセットっていうシステムなんだけどね」


 配信を終了させてから始まった、サイのレベルリセットシステム講座。

 レベルリセットとは、その名前の通りレベルを初期レベルである1まで戻すことらしい。

 そして、再度レベル上げを行うことでSPを稼ぐ仕様のようだ。


「ふ-ん、それでレベルリセットの条件は?」

「課金ありならレベル50以上、ただし前回のレベルリセットから一週間以上経過」

「ふむ、じゃあ俺は課金すればレベルリセットができると」

「そう言うこと。廃人クラスを含む上位勢は、みんな一週間でレベル50以上まで上げてレベルリセットを繰り返してるね」

「なるほど。サイもそうなのか?」

「うーん、私はそうでもないかな? 最初のうちは一週間リセットだったけど、ある程度レベルが上がってからはのんびりだったし」


 つまり、サイはそこまでレベル上げをしていないということか。

 ……ということは廃人クラスはあれ以上の火力が出せるのか。


「私も現在レベルが50になったからレベルリセットできるね。フィートはどうするの?」

「そうだな……レベルリセットしてみるか。ちなみに、課金しないとレベルリセットってできないのか?」

「ううん、課金しなくてもできるよ。その場合、レベル70以上で前回から二週間以上経過かレベル50以上で前回から三週間以上経過、どちらかの条件を満たさなくちゃだけどね」


 ……これは課金した方がよさそうだなぁ。

 なんとなくだけど、かなりお金が飛んでいくゲームだぞ。


「このゲームって初期投資にかなりの額が必要なんだな」

「私たちはお小遣いに余裕があるからね。普通の人はいきなりSPシロップをマックスまで使わないし、ライドだっていきなり買わない。【暗視】スキルだって序盤はほとんど使わないもの」

「そういえば使ってないな【暗視】スキル」

「必要なのは精霊の森くらいだものね。幽玄の森でもあると便利だけど」


 便利スキルではあるけど必須スキルではないのか。

 そんなもの覚えさせるなと言いたい。


「さて、それじゃあレベルリセットの説明続きね。レベルリセットに必要なのは『神代の秘薬』か『英傑の秘薬』が必要なの」

「そのふたつの違いは?」

「『神代の秘薬』は通常のレベルリセット用、こちらのお値段500円。『英傑の秘薬』はレベルリセット時にボーナスSPがもらえてお値段1000円」

「つまり、『英傑の秘薬』の方がいいと?」

「なんだけど『英傑の秘薬』はいまのところ一プレイヤー二回までしか買えないのよ。もちろん、上位勢はマックスまで使っているわけだけど」

「サイは?」

「もちろん二回使ってる」


 なんだかんだ言っても、サイはゲーマーだよな。

 お金で解決できるところはお金で解決しているあたり。


「まあ、どっちを選ぶかはお好みでね。ボーナスSPって言ったって30だから」

「……レベル10分か。かなり大きくないか?」

「序盤では大きいね。だからこそ、初期で使ったほうがお得ではあるんだけど」


 だったら決まりだな。

 明日課金して『英傑の秘薬』を買おう。


「それにしても初級スキルの最初の壁か……結構長いねぇ」


 どうやら、サイの考えは『生命の粉末』へと移ったようだ。

 レベルリセットの説明はもう終わったということだろう。


「初級スキルの最初の壁ってどういう意味だ?」

「えーっと、初級スキルって言うのは【調合】スキルの次にある初級なんちゃらってスキルのこと。生産スキルは無冠スキル、初級スキル、中級スキル、上級スキルって具合に進化してくの」

「へぇ。上級スキルまであるんだな」

「上級スキルに到達したのはふたりだけって話だけどね。ベータテストのときは中級スキルまでしかなかったし」

「ふむふむ。じゃあ最初の壁は……って最初の熟練度をマックスにしろってことか」

「正解。ブリュレに聞いた話だと、最初の壁は熟練度一万のはずだから先は長いよ」


 サイの言う入門スキルである【調合】の最初の壁が五千、次が八千だったことを考えると妥当ではある。

 妥当ではあるが……確かに長いな。


「……ああ、でも。低級リジェネポーションや低級メディテポーションを量産していればすぐに超えるかも」

「……量産するほど日光草と月光草を集めてくるのか?」

「……きついねぇ。オババに卸す分も考えたら、一日に作れる量ってそれぞれ十個ずつ程度しかないよ」

「そういうわけだ」


 量産したくても素材がなければどうしようもない。

 これでこの話は終わりだな。


「ああ、それと。さっき、リジェネポーションとメディテポーションを売るって話が出てたけど、それぞれ値段は三万と四万から様子見ね」

「了解だ。早く売れすぎるようだったら値上げか?」

「うーん、値上げまではしなくてもいいけど……どうしようかな」


 サイにとっても悩みの種か。

 本当に扱いに困るポーションだ。


「とりあえず、いま手元にある分をマーケットに流してみるか?」

「それがいいね。それじゃ、マーケットまで行ってみよう」


 サイに連れられてプレイヤーズマーケットにアクセスするためのマーケットボードに移動。

 そこで教えられながらマーケットへと出品していく。

 とりあえず、手元にあった分をすべて出し終わったら今日のゲームは終了。

 普段に比べるとちょっと早めではある。

 だが、やれることもないので明日精霊の森に移動しやすいように西門近くの公園でログアウトだ。


 さて、出品したポーションはしっかり売れてくれるかな?

 いままでのポーションも売れてたんだからサイは大丈夫って言ってくれたけどさ。

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