第115話山の井の 浅き心も 思はぬに

                  よみびとしらず


山の井の 浅き心も 思はぬに 影ばかりのみ 人の見ゆらむ

                 (巻第十五恋歌五764)

※山の井:山の井戸、水汲み場。「浅き」にかかる枕詞。山の泉は平地の泉より浅いとされていた。

※影:面影。


山の中の井戸のような浅い心でお慕いしているわけではないのに、どうしてあの人ははお出でくださることもなく、ただちらちらと面影だけが見えるだけなのです。




「安積山 影さへ見ゆる 山の井の 浅き心を わが思うはなくに」

(万葉集巻16-3807)が元歌。

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