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 僕たちはそのまま何事もなく、下と上に続く階段の反対側にある休憩所までやってきた。「よいしょっと」と瞳は言って、昨日と同じ丸椅子に腰を下ろした。「ふふ、昨日はちょっと大変だったけど、すごく面白かったね、猫ちゃん」と瞳は言った。瞳は昨日の追いかけっこのことをとてもいい思い出として自分の中に受け入れているようだった。

「でも、ああいうことが何度も続くと怒られちゃうし、大麦先生や秋子さんや冬子さんにも心配をかけちゃったばかりだから、今日はこのまま、ここでおとなしくしていようね」と瞳は言った。どうやら瞳は今日は階段を上にも下にも登らずに、この場所で真夜中のお散歩を終えることにしたようだ。僕はその提案を受け入れて、小さな声で「にゃー」と鳴いた。

 周囲は闇。聞こえてくるのは風の音だけ。その風が死を連想させるほど冷たい、ということを除けば、ここは天国のように居心地の良い場所だった。僕はこの休憩所のことを気に入った。

「静かだね、猫ちゃん」と瞳が言った。

 瞳は椅子から投げ出した両足をぶんぶんと小さく動かしながら周囲の風景をきょろきょろと見渡していた。僕の目はだいぶ闇に慣れてきて、うっすらと病院の風景が見えるようになっていたけど、瞳の目にも僕と同じような風景が見えているのかは、僕にはわからなかった。今の僕は人間ではなく一匹の猫だったからだ。

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