第53話クライド大将と部下
ロッステルの話をまとめていく。
まず帝国が攻め込んできた時点で、ロッステルは領民を捨てて即座に逃げていた。
残された守備兵は城主を失い混乱して一気に制圧されたとこのことだ。
「領主である私さえ生きていれば再起はできる。土地や民はまた集めれば良かろう」
まあ確かに王が生きていれば再起ができるという意味では正しい場面もあるんだが……全く戦わないどころか味方の兵も気づかぬうちに撤退していたというのはもう、自分可愛さでしかないな。
「その後セレスティア公国が息を吹き返して、今というわけか」
「ふん……」
だが気になることがある。
この地域、明らかに領民が少なすぎるのだ。
戦地になっているから避難したのかと思っていたが、それにしたっておかしいくらい静かだった。
まず疑ったのはグガイン中将だ。
捕虜とせずに皆殺しにしていてもおかしくはないと思った。だが結末は、それよりひどいものだった。
「今の公国に、そして一度制圧された我が領土に余裕などないのだ。今は使えぬ人間よりも兵士を食わせるのを優先したまで」
帝国は領民を適切に扱っていた。
そしてセレスティア公国が攻め込んできたときに、身代金を要求して返還を申し出たのだ。
それに対する答えがこれだ。
「帝国も食わせる金が惜しかったのか無条件で解放しよったわ。のこのここちらにやってきた領民ごと帝国の無能な兵士どもを血祭りにあげた。それだけだ」
「お前は……」
「私の意思ではない。クライド大将のご指示だ」
この地が激戦区となった理由、グガイン中将のせいかと思っていたがどうやら考え直さなくてはいけないらしい。
「クライドとその周囲の人間について答えろ」
「良かろう。お前に公国の恐ろしさを思い知らせてやるとしようか」
拘束されているというのに笑みを浮かべるロッステル。
周囲の警戒を強めながら他の暗殺対象や周辺の情報を集めることにする。
グガイン中将があえて暗殺ではなく情報収集に留めたクライドとその直下の将校たち四名。
ロッステルの余裕の笑みもまた、こいつらの強さから来るもののようだった。もっともこのタイプは自分が助かる確信もないとこの態度は取らないだろうから、どこかから助けが来ることを確信しているようだったが……。
「クライド大将がいる軍に負けはない。あの方々がおられる限りはな……」
得意げに情報を吐き出してくれているうちは何も言わないでおこう。
クライド自身はともかく、他の四人に関しては調査対象であるのと同時に、暗殺しても構わないとある。
こいつが大した情報を持っていなかったとしても場所さえわかればいいと思い、質問を続けた。
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