第一章 今宵のアヤカシ
「私かえ?名乗るほどの者ではないが、誰だと問われれば、名乗らぬわけにもいくまいて。」
私の言葉に、優也は、眉を寄せる。
「私は、この山に住む白狐と申す者。お前こそ、何奴じゃ?私に無断で、この山に住みおって。」
「この山は、お前の山なのか?」
「そうだ。もう500年も前から、私の山だ。」
私が言うと、優也は、クククと、声を立て笑う。
「500年だと?お前、人間ではないのか?」
人間であるわけがあるまい。こんな夜更けに、こんな山奥に、何をしに来ると言うのか。
仮に、人間だとすれば、それは、自ら命を断ちにきた者だろう。
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