はながり

 大殿様に、花狩りをしてほしいと言われた。

 なんでも咲き終わったからと言うことだ。

 して、見てみると花は枯れて黄土の枝と葉のみで、花の面影もない。まだ生きてはいるが醜い姿であるし、夜中に出会うと叫びをあげるものもいるだろう。

「幽霊だ」と。

 とりあえず並んでいる順に枯れた花を切り落とす。

 長い廊下の全てを狩らねばならぬので、どうしても花たちが逃げるのだ。

 しかしここは出口はない。花ならば環境の良い場所で育てねばならない。

 自然と出入り口は一つであった。

 逃げる、逃げる、ひとつ、ひとつ、花を狩る。茶色で醜い花弁を切り取り、すっきりさせる。あとでハサミの整備をしなければ錆びてしまうなあ。

 ただ花であった部分を切るだけなのに逃げる逃げる。

 どうせ、また生えるのに、なぜ逃げる。

 顔が変わるだけよなあ。

 奥の奥まで、隅々と花狩りをした。

 綺麗な小さい花弁もあったが花狩りだ、いらぬだろう。

 そうして終わり、報告をするために出口へと向かった。

「このっ」

 意外、その細い枝で私を刺した。

 意外や意外。そのまま振り返り花を狩る。

 背を刺されたが、まあいいだろう。狩るものなど私以外にもいるしなあ。

 とんだ花狩りよ、ろくなことがない。

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