04:<GenocideEngine>
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<GenocideEngine>と呼ばれる兵器のことを話そう。
正式名称は汎用核搭載最終装置武装形態と呼ばれるそれは《黄金戦争》以前の虐殺兵器である。
対人特化の兵装を全身に搭載、更に都市部を消し炭にするための核武装をしたそれは現在に於いては希少かつ加工が困難な超過耐合金の装甲に身を包み、自己再生能力を保有する。
その電子装置は《災厄》により失われほぼ脳無しと揶揄される状態に陥っているが、ある程度修復し、奇鋼礼装に接続しそのAIに操縦をさせる手段が確立している。
宗司が手に入れたのもその、<GenocideEngine>の一匹であった。
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4190 A.D 7.21.13:45 descent point:Northern Wilderness of Oanus Autonomous Region
ENCOUNTERED AN ASSAILANT.
"G-κατῶβλεψ"
BE ATTITUDE FOR GAINS...
1:Avoid them patiently!
2:The eyes! Gouge out his eyes!
3:Even a dog runs into a pole when walking!
『こ、こいつは……Gカトブレパス!かつて我が作った帝国の要の一匹ではないか!』
ドライスが狼狽える、AIにとっての狼狽えるというのは、率直な警告信号だ。
「がははははははは!どうだ!この俺様のG兵器はよ!」
「それはお前のじゃない、お前が殺し尽くした村のものだ!」
顔を合わせずに華南は降下、空中から地上に戻る。
艦隊の砲撃が華南のスレスレを通っていく。
「おいおい、この南方では力こそが全てだが?全くホワイトスキンの悪魔どもは悪魔の倫理で動いて困るな!」
『気を付けろ華南!こいつは重力を操る!』
華南の機体の落下速度の加速が弱まっていく、重力制御も碌に機能しなくなる。
「っ!重力を掌握した?」
「ん?俺何かしたか?あ、あー!《カトブレパス》のエフェクトだな!周辺の地面を掌握してその重力を制御する!重力を操るってのはこういうことだ!」
宗司は《アポロフェイク》を着込み、《カトブレパス》のコクピット内で腕を組み挑発、奇鋼礼装の背部装甲は取り除かれ、むき出しになった奇鋼礼装のスケルトンにつけられた増設コネクタには無数のケーブルが接続されている。
重力が消失していく、核推進のみの速度、感覚が狂った、と思った次の瞬間、猛速度で華南は落下し、地面に叩きつけられた。
盛大な土煙が、地面から起こった。
「……逝ったか?本当に逝ったか?」
あまりにあっけない決着、地面の重力を弱め、急に強めてその速度を叩きつけた。
通常ならこれで即死だろう……だが相手の奇鋼礼装は重力制御をする能力を持っていた。
重力を強めていく、細かい動作は宗司の脳波を読み取った奇鋼礼装のAIが《カトブレパス》に送り、制御する方式だ。
《カトブレパス》は重力を制御するためには地上から1000m以上の高度に展開できない。つまり奇鋼礼装との闘いにおいてはフルスペックを使うためには超近接戦闘を強いられる。
万が一殺し損ねていれば、膂力で懐まで入り込まれ、超過耐合金の装甲を断ち切る技を見せるかもしれない。
宗司は卑劣な男だが、強かな男でもあった。
《カトブレパス》の主砲ユニットを向ける、プラズマナパーム砲……超高温の圧縮プラズマを封じ込めた超電磁ジェル球を叩き込む対都市殲滅兵器だ。
ジェルは着弾後膨張、高さ500m、広さは最大直径10kmの範囲まで広がり、そのジェル内のプラズマは数十万度の高温ですべてを焼き尽くす。
先ほど放ったのはそのプラズマナパームの局地投射モードだ。
土煙が去った所で、《神討剣貴》は四つん這いになりながら立ち上がろうとしていた。
「……させるか!」
主砲を放つ、ジェルに封じ込められた圧縮プラズマ……光球とも言えるそれは地に当たり、光りが膨れ上がる。
光、高熱による乱気流が吹き上がり、その中に存在する《カトブレパス》の超過耐合金は防ぎきり、揺れを一切感じない。
唯一光だけはすさまじく、シャットアウトされた。だがそれも数十秒ほど経過するとすぐに戻る、外の視界が《カトブレパス》のコクピットに描かれた。
地上は地獄だ、あたり一面が焼き尽くされ、どろどろと融解した土や岩石等が見える。
《神討剣貴》に立ち向かい敗れ、逃げようとしていた連中もいただろう、このサバンナの地で暮らす獣達がいただろう、地を歩き行商を行う旅人もいただろう。
だがそれらは全て死の光によって、痛みも何もなく死に果てた。
「はぁ……はぁ……」
宗司は息を荒げる。
この機体のプラズマナパーム砲は大規模な城砦都市すら吹き飛ばすのなら全く問題のない火力だ。
「終わったのか、終わったんだよな──?」
宗司は現実感が沸かないまま、口に出す。
その時だった。
《カトブレパス》に友軍の砲撃が飛んできた。
「なっ!?」
情報が表示される、飛んできたのはレールガン及び人道的火力……通常の艦船や奇鋼礼装なら一撃で破壊可能なほどに威力を高めたレーザー砲、直撃し、超過耐合金で出来たそのボディを破壊するに至らないが、強い振動を与える。
「く、狂ったか!?」
通信を行うとする、だがジャミングが発生している。
周囲の景色を見る、すると次の瞬間、周囲から光が消えうせた。
「マテリアルミストで、覆っただと!?霧術師か!?」
宗司は察する、周囲……この上空1000mまでマテリアルミストで形成された構造体が瞬く間に形成され、自分を囲っていると。
マテリアルミストは自己増殖する、そして大気中にも既に相当存在し、空気に近く人々はそれと共生している。
奇鋼礼装はそのマテリアルミストをかき集め、支配し、熱制御、光学迷彩、空力の制御等に利用している。
その支配能力はスケルトン側に搭載された人工知能の演算能力に依るものだ。
精々が奇鋼礼装の周辺のマテリアルミストを取り込むだけでしかない。
霧術師と呼ばれる連中はそれらマテリアルミストを扱うのに長けた存在だ、制御装置のAIつきの杖を持ち、瓶に詰めたマテリアルミストを用いて火の玉を出したり、あたりを凍らせたりする術を使って戦う存在だ。
奇鋼礼装相手には無力に近い、マテリアルミストを用いての攻撃をしようにも奇鋼礼装のAIに霧を掌握され無効化されるからだ。
それでも幻術や各種搦め手を使うため、霧術師は油断が出来ない存在であると武侠の間では語られる。
しかし、ここまで広域に支配する霧術など、複数のAIを用いても困難だろう、制御しきれない、いくらAIが細かい行動をしようとも本体は人間だ、広域偽装など不可能に近い。
だが、だがだ、武侠は常に例外を想定する。
相手のAIの演算性能が通常の常識を超えた力を持っていたら?
特殊なマテリアルミストを利用して広域に展開したとしたら?
或いは、天才的な演算能力で多くのマテリアルミストを掌握していたら?
答えはわからない、だが、強力なマテリアルミストの制御能力を持つ霧術師が牙を剥いている、それを宗司は理解した。
次の瞬間、上から反応、何かが主砲に叩きつけられる……それは杖だ、3m程の杖。
高密度超過耐合金で構築された、<GenocideEngine>殺しの杖だ。
「っ!?」
「驚いたかい、まぁ、私も危なかったがね」
それは《神討剣貴》だった、彼が杖を《カトブレパス》の主砲に叩きつけ、その装甲はへこみ、変形した。
そのまま《神討剣貴》は《カトブレパス》の背に着地する。
「てめぇ……どうやってッ!」
「簡単な話だ、まず地面に叩きつけられる瞬間重力制御にリソースを重点、そして衝撃を軽減したらすぐにマテリアルミストを散布しデコイを展開、私は迷彩状態にして逃げただけだ」
宗司は《カトブレパス》の背に重力嵐を展開させようとする。
「10kmだぞッ!?」
重力嵐に奇鋼礼装の装甲ががたがたと揺れる、そんな
「だが高さという面で言えば有効射程は500mだよ、広域攻撃を撃つのは予想できた、なので加速しつつ跳躍すれば後はマテリアルミストのグライダーで気流に乗れば逃げるのは容易さ」
黒と青のサムライの外套が重力嵐で靡き、一歩、一歩足を進めていく。
「制御したマテリアルミストで作った巨大な天幕の感想はどうだい?君が雇った船は見事に役だってくれたよ」
「命を弄ぶ魔女がっ!ふざけやがってッ!」
宗司の怒声、だが《神討剣貴》は臆せず、杖を装甲に突き立てながら歩き、尾部の側面にまでたどり着き、そこに杖を突き、穿ち、傷口を広げた。
「ふざけてなんかないさ」
杖は引き抜かず、突き刺したまま、重力嵐に耐える。
広げた傷口に黒青のサムライの外套が水のようにするりと入って行き、そこで要約杖を引き抜き、後ろに向け跳躍する。
黒のサムライは重力嵐に身をゆだねながら開かれた傷口……ゲル状のマテリアルミストが膿のようになっているそこに対し、何本もの剣型のレーザー砲が触手のようなアームを動かし狙いをつけ、光が放った。
複数のレーザーの熱をマテリアルミストに直接当て、減衰させ、装甲内部に高温を流し込む。
内側から急激な温度の上昇、超過耐合金故に減衰し、高温になり、内側から尾部が焼かれ、緊急爆砕ボルトが起動、尾が爆ぜ、尾に追随するアカシャ重力制御炉も深刻な損害の為も切り離され、そして<GenocideEngine>は重力制御を失い、地面に落ちていった。
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