手と 手と

 彼女を狙って、必死に努力して一カ月。


 きっと彼女も僕が好き……そんな関係にはなれたと思う。


 会うたびに触れたくてたまらないけれどそんな勇気はなくて、僕は今日も彼女の隣、うまく言葉が紡げずにいる。


 でも、今日こそは。


 ――きっと、触れられる。


 せめて、手を繋ぐくらいは。


 ――だって、夏だから。


 人混みの中、熱気に汗ばむ手を懸命にティーシャツの裾で拭う。


 ――いまなら。


 僕は、そっと触れたひんやりと冷たい彼女の手を、きゅっと握る。


 彼女は振り返って笑ってくれて、同時に花火が夜空に咲いた。


 優しく僕の手をなぞる彼女の指先。


 彼女がうっとりと空の花が散るのを眺め、僕がそんな彼女に見とれる。


 ――嬉しい、うれしい、うれシイ、ウレシイ。


 その瞬間、彼女はどっと押し寄せた人混みに流されてしまった。


 僕は思わず固まって、絡み付く冷たい感触に息を呑んだ。





 ちょっと待って。じゃあこれ……誰の手……?





 ――ツカマエタ。




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