天然ボケ王子は修行中〜勇者様(笑)は回復役は男の神官より聖女の方が良いそうです。
砂月ちゃん
本編
第1話 勇者パーティーをクビになったんですが
「やっぱり勇者パーティーの回復担当と言えば【聖女】だよな。」
「そうそう♪やっぱ男の神官より、【聖女様】だよな~♡」
「という訳だ!セイマ、お前はクビな!!
明日から来なくていいぜ♪」
????
何が『という訳』なのでしょうか?
因みに上から魔法使い、斥候兼弓師、魔法剣士のセリフです。
「えっ!?クビですか??」
護衛達は訳のわからない事を言って、サッサと冒険者ギルドの休憩所から、出て行ってしまいました。
あの人達、何を言っているのでしょう?
貴方達を雇っているのは、私の方なのですが……
護衛対象をクビにして、出て行く護衛とか聞いた事がないんですけど。
あ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。
私はセイマ、職業は【聖人】です。
各地を旅し、怪我や病気で苦しんでいる方達を聖魔法や薬師・医療の技術を駆使して、救う事を生業としております。
先程、私をクビにした彼等は【稀人(まれびと)のA級パーティー】だと聞いたので、護衛を依頼したのですが、何か勘違いをしている様子です。
確か『勇者パーティーには【聖女】だ。』とか何とか言ってましたね。
勘違い①
異世界転移して来た稀人の方々の世界の常識は知りませんが、こちらの世界の【聖女】と呼ばれる女性達は基本的に、担当する地域から出ません。
彼女達の仕事は神殿や治療院等で、怪我や病気の方達の治療をする事。
そして、神に祈りを捧げる事です。
勘違い②
冒険者の回復担当は、ほぼ男性です。
偶に女性もいらっしゃいますが、そういう方はだいたい水魔法の回復魔法を使える方か、稀人で聖魔法スキル持ちの方で体力のある方ですね。
稀人でも体力のない方は、神殿で保護してもらい、能力に合わせて各地の神殿か治療院に派遣されて行きます。
何故、【聖女】が旅に同行しないのか?
それは彼女達に、旅に出られる様な体力がないからです。
【聖女】のほとんどが貴族や大商人のご令嬢達なので、そんな体力がある訳ありません。
稀人でも、体力補正の無い方では旅に同行するのは不可能でしょうね。
基本的に、冒険者の旅は徒歩ですから。
たまに、馬車に便乗させてもらったりとかもありますが。
勘違い③
聖魔法スキル持ちで特にレベルが高い者の事を女性は【聖女】男性は【聖人】と呼びます。
【聖人】は私の様に、護衛を連れて各地を旅しながら、神殿や治療院まで来れない人達を癒して廻る者と、冒険者パーティーと旅をしながら、彼等を支援する者に分かれます。
勘違い④
特に稀人の方達の勘違いに多いのが、【勇者】に関する事です。
こちらには【勇者】という職業はありません。
実際に【勇者】と呼ばれているのは、冒険者パーティー等(偶にソロの方もいらっしゃいます。)で目覚ましい活躍をされている方々や、【聖人】の中でも高レベルで神殿から認められている人の事を言います。
有名な方ですと皆さんよくご存知の【勇者シルバー】とか。
まぁ、彼の場合通称ですけど。
外国ではズーラシアン王国の、タイガ王子とかですね。
あの方は単独でドラゴンを倒し、ズーラシアン王国を救った正に【勇者】です!!
しかしなんと言っても、一番有名なのはユイナーダ王国初代国王、トール王でしょう。
『稀人が一代で国を造る』とか、憧れます。
彼の活躍を描いた作品は、子供から大人までたくさんの方々が読んでいます。
ただしトール王の事を作品にする場合、神殿を通して審査が行われ、許可が無いと発表する事は出来ません。
過去にはトール王を、BLという特殊なジャンルの作品に登場させて、投獄された稀人の作家がいたとかいないとか……
【聖人】で【勇者】の称号持ちはだいたい国に、5人くらいはいます。
ユイナーダ王国で、一番有名なのは私の尊敬する《クラウス》様。
この方は治水工事を得意とし、各地で活躍されています。
例外は別大陸にある、あの国くらいでしょう。
異世界から人を拐って来ては、
『あゝ【勇者】様!どうか【魔王】から我らをお助け下さい!!』
と言って、こちらの大陸に送り込んで来るんです。
もちろん【魔王】なんて存在しないんですけど。
大陸間もかなりあるので、侵略とかも面倒なだけですし。
まぁ、とにかく私の護衛依頼を途中で放棄して、出て行く様な方達に【勇者】の称号が付くはずありません。
それにしても困りましたね。
これでは目的地まで辿り着けません。
少しでも早く、皆さんの治療をしたいと思って彼等を雇ったのに、とんだ見込み違いでした。
今回の目的地は初めて向かう場所なので、道案内も兼ねていたのにまさか自分達が【勇者】だと勘違いして私を置いて行くなんて……
私が途方に暮れていると冒険者ギルドに、なんと知り合いが入って来たのです。
《ここで会ったが百年目(※1)》、チャンスですよ!
「ハーシー!ハーシーじゃないか!?」
「えぇっ!?セイマ様?何故こんな所にお一人で?
護衛の方はどうされたんですか?」
冒険者ギルドに入って来たのは我が心友、学園で教師をしているはずのハーシー・F・サイドでした。
「実はね…先程まで一緒だったんですけど、パーティーをクビになったんです。」
「…………はい?」
ハーシーが、意味がわからないという顔をしています。
大丈夫、私も意味がわかりませんから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※1
誤用はわざとです。
ことわざ・慣用句など過去の稀人達が間違えて伝え、そのまま広まっています。
地域によってはまともに伝わっている場所もある為、知らないとたいへんな事に……
特に【力不足】【役不足】、この二言は要注意です。
転移して来た稀人の多くが、若い世代だった為か、間違えて覚えていたのが原因かと思われます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます