k01-07 スライムがあらわれた
とりあえずの昼食を終えた2人。
「……これからどうしましょうか?」
「そうだな……まぁ、魔兵器は使えないとは言えせっかく外まで来たんだ。ほれ、あそこの草むら見てみろ」
そう言って少し離れた場所を指さすジン。
その方向を見てみると、1匹の野ウサギがモサモサと草をかじっていた。
「あ、野ウサギですね! 可愛いなぁ」
そう言って笑顔で見つめるアイネ。
「違う違う。その横の草むらの中」
「え?」
そう言って目を凝らすして見ると……草むらの中からキラキラとした球体が野ウサギに向かって飛び出した。
「あれは……マモノ!?」
驚いて立ち上がるアイネ。
「そ。街の近くとは言え外は外だ。この辺でも野生のマモノは出る。ちなみに、あれは最弱で有名なスライムだな」
勢いよく飛び出したスライムだったが、素早い野ウサギは可憐に身を躱しピョンピョンと駆け足で逃げ去っていった。
その場に残されたスライムはおずおずと草むらの中へと戻っていく。
その様子を茫然と見つめるアイネ。
「別にマモノなんて珍しくもないだろ? 学園の演習エリアにはもっと強いのがいっぱい居るらしいし。中等グレードで実習に行ったろ?」
学園内には自然の森を生かした広大な演習エリアがあり、その中では戦闘訓練用に管理された初級~中級向けのマモノが放し飼いになっている。
「た、確かにエイプとかゴブリンとか見ましたけど、その時はガッツリ武装した引率の先生方が何人も一緒でしたし……」
「とりあえず! 兵器は使えないが魔鉱石は好きなだけ使って良いから、これでこの辺に居るマモノをボッコボコにして来い!」
「へ?」
アイネはキョトンとして聞き返す
「射撃演習場もダメ。街の外もダメ。となりゃ魔兵器は諦めて、昔ながらの方法"モンスターをボコってレベルアップ”これしかないだろ?」
「え、えぇ!? あれと戦うんですか!? しかも魔兵器無しで!?」
「そんなに驚く事ないだろ。魔兵器なんて無かった昔の人達は皆そうしてたんだぞ!?」
「そ、そんな無茶です!」
「無茶じゃない! とりあえず3匹!」
指を3本立ててアイネの顔の前に突き出す。
アイネは口をへの字に曲げて不満顔だ。
「まぁ、心配すんな。スライムはああ見えて意外と賢くて臆病だ。自分より弱いと思った相手以外には積極的には襲い掛かって来ないから落ち着いて間合いを取れ」
「わ……分かりました……」
そう言ってリュックから手ごろな魔鉱石を1つ手に取り、そろそろとスライムに近づいて行く。
どうにか気づかれずに後ろから近づき、そーっと手を振り上げる。
静かにその様子を見守るジン。
(……撲殺する気か? 思慮深そうな奴かと思ったけど案外直感的な性格なんだな。他にもやりようはいくらでもあるんだが……)
そんな事を考えながらもとりあえず黙って見ている。
いよいよという距離まで近づいたとき、スライムがアイネに気づき互いの目(?)が合う。
――次の瞬間
アイネの腹部目掛けて体当たりを仕掛けるスライム!
「う……!」
ノーガードで思いっきり体当たりを食らったアイネは思わず倒れ、激しく尻餅をつく。
その間にスライムはいそいそと草むらの奥深くへ逃げていってしまった。
………
よたよたと立ち上がり、服に付いた砂を払うアイネ。
俯いたまま無言でトボトボとジンの元まで戻ってくる。
「……スライムってのは自分より弱いと思った相手以外には襲い掛かりは……」
「わーわーわー! 聞きたくないです! それ以上言わなくて良いです! たまたまです! 別に、スライムに自分より弱いと思われたとかじゃないですから!」
半泣きになりながらジンの言葉を遮るアイネ。
「ま、まぁ、最初は上手くいかない事もあるさ。見てるからとりあえず思う通りにやってみ」
「……はい」
そう言って近くにある岩に腰掛けるジン。
アイネは草むらでスライムを見つけては追いかけまわし、追いかけまわしていたと思ったらいつの間にかスライムに追いかけまわされ……
挙句体当たりを食らって派手に転んだり。
……そんなこんなで小一時間が過ぎていった。
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