第16話 ふくへい
さて、話し合いの時間です。
リビングは広すぎるため、応接間に移りました。
わたしの正面には、小柄でかわいらしい美少女、
まずは謝罪から。
「いやあ、すまんな。どうも娘のこととなると、ついカーッとなっちまって。危うく
笑って済むなら、わたしも絞め技をかけようかしら。
でもまあ、妹式アプリの開発者としては、一ミリくらい罪があるような気もするし? 今回は水に流してあげます。
「おい、今の話、詳しく聞かせろや」
げげっ。
わたしが妹式アプリの開発者ってこと。
バレてなかったのっ!?
すると梨乃ちゃんから、助け船が。
「ねえ、お父さん、妹さんは私たちの家族になる人よ? ティノーさんだって、一度はお断りしたお付き合いを、善意でまた取り持ってくれるわけだし。あまり怖い顔をして、おへそでも曲げられたら、今度こそお父さんに責任を取ってもらいますからね?」
「お、おうっ。すまんな。俺はべつに梨乃と結婚しても構わんのだが、それだと母ちゃんが怒っちまうからな」
権蔵さん。
やっぱり、ダメなパパさんだ……。
「それで妹さん、直木さんは今どこに?」
げげっ。
ティノちゃん、どう答えるべき?
『正直にお答えしてみては? 別の惑星に飛ばされましたと』
信じるわけないっしょっ!
ねえ、ティノちゃん、もしかして。
わたしのこと嫌い?
それとも反抗期なの?
『いえ、人工知能の私にとって、冗談は誇りであります』
管理者権限ぽちっと。
不要な発言はすべてカットで。
『あわわ、あわわわわ、ごめんなさい。悪ふざけが過ぎました。この場面において最適な回答は、本来の計算通り、ここで梨乃さまを「押しかけ女房」として住まわせることです。つまり、お兄さまは、共同生活のための資材を買い出しに行かれたと、そうお伝えください』
権蔵さんは、どうなるの?
一緒に住むぞー、とか騒ぎ出さない?
『それはありえません。梨乃さまのお父さまは、梨乃さまが妹式アプリの力で、幸せをつかむものと信じておりました。ですが、初デートの日に泣きながら帰ってきたものですから、たまらず相手をぶっ殺してやろうと、刃物まで持ち出して――』
いや、まって。
権蔵さん、刃物もってるの?
わたし聞いてないけど?
ねえ、ふたりを最上階まで連れてきたのって。
ティノちゃんよね?
もしかして、私のこと、抹殺しようとしてる?
『とかく。きのうの件は誤解がとけましたし、これから幸せな同棲生活が始まるわけですから、いくら娘さんべったりな権蔵さんでも、血の涙を流してご帰宅されることでしょう。ダメなら奥さんに連絡です』
言われるがまま伝えてみました。
すると、あれれ?
血の涙って。
歯ぐきから流れるものなのね。
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