君といつまでも
@yudoufu03
第1話
今日は雨。
僕はいつもの窓から外を見る。
「今日は月が見えないじゃないか。」
いつもなら晴れた空に、大きな青い月がこの窓から見えるはず、なのに今日は生憎の雨でいつもの月は見れそうにない。
「あーあ。月が見れないんじゃつまんないや。今日はユートの部屋にでも行くか。」
ユートは僕の友達でもあり、僕のお世話係りでもある。ユートは体が弱いからいつも外へ出られない。だからいつも、僕が外で見つけた物をユートに見せるんだ。今日は雨だから何もないけど、ユートはいつも一人ぼっちだから会いに行く。
「ユート。遊びに来たよ。今日は雨だから月が見れないんだ。」
そう言いながらユートに近寄る。
「あれ、また来てくれたのかい?今日は雨だね寒くないかい?なあ、ささめ。」
「にゃーん。」
そう、僕はユートの友達でもあり、ユートの猫だ。
捨て猫だった僕をユートは拾ってくれた。
その日も雨だった。
ユートの家の前に、僕はよくある段ボールに入れられて置かれていた。
雨の中気温も下がってきた夜に、僕は精一杯の声を振り絞って鳴いて、鳴いて鳴いて泣いたのだ。
その時玄関が開く音が微かに聞こえた。
「何の音?何かいるの?」
「にゃー、、、。」
「猫ちゃんだ!!大変だ!!こんなにも冷たくなって、早く温めなきゃ死んじゃう!!」
ユートは今にも消えそうな声で鳴いた僕を抱きかかえ、家の中へ入れてくれたが、寒さと空腹で僕はそのまま目を閉じてしまいそのあとのことは覚えていない。目を覚ました時には、温かいふかふかの毛布の中で、隣にはユートがいた。
「にゃーん。」
「あ、れ。猫ちゃん起きた?生きててよかった。お腹空いているかな?ミルク飲む?」
これが僕とユートとの出会いだった。
「僕ね、生まれつき体が弱くて、あまり外へ出たことがないんだ。こんな体だし、学校にも行けやしないから友達もいないんだ。君も一人ぼっちなら、僕の初めての友達になってよ。僕が責任をもって君をお世話するし、行くところがないんだったらここにいればいい。」
「にゃーん。」
いいよ、僕を見つけて温かいふかふかお布団とご飯をくれたお礼に、僕が君の友達になるよ。
「僕の名前は優斗、君の名前はどうしよう、、、。」
「ささめ。細雪の、ささめだ。」
ユートはお化けでも見たかのように目を丸くして口をパクパクしていた。
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