第20話 あのころのままの君へ。

君がいなくなってから    時間は早いものだね


気付けばもうほら…     一年近く経つんだね…




あのおやつ取り合ったことも    一緒に遊んだことも


なんでも器用にこなす君に    教わったことだって




ずいぶん昔のことみたいに      (遠く手が届かないのに…)


ずいぶん最近までそこにあった様に   (鮮明にここにあって…)




忘れてないんだ     …きみを。






大人になる前に   呼吸を止めた君へ


志した夢のなかで   この世にサヨナラした君へ




君が繋ぐはずだった未来は   まだ置いてけぼりのままで


いなくなった君をずっと   …探しているよ




君がいなくなってから   進むのは無情な時間だけ


現状はなんにも変っちゃいないんだ


思い出だってそうだよ  まだ明日も笑った君が


またいつものように起きてくるのを


何も知らないふりして    …まだ、待っているよ。




19歳の生涯を   閉じた君へ


その先が紡がれてくことなんて  もうなくて…


19歳の変わらない笑顔のままで。




君よりずっと  小さかった背もやがて抜いてしまうだろう…。


君よりずっと  知らなかったことも知っていくだろう…


流れながら  僕らをさらっては


未来へ放り出してしまう時間ときが


やがては君の  19歳を  追い越して僕を  


『大人』にしちゃうだろう…。




変わらないまま…   このままで…いたいよ




君よりずっと  小さいままでもいい


そんな君に撫でてもらうのが  すきだった…




君よりずっと  知らないままでいい


そんな君にたくさん教えてもらうことが  だいすきだった




僕より前を歩いては手を引いてくれる君のその背中が






……すきだったんだ。














僕より先にこの世界に出逢ったのに


僕より先にこの世界に別れを告げた君を追い越して





僕は  『大人』になってしまうんだなぁ…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る