第18話 告白

何も変わらぬまま診察の日になり、腫れた目でフラフラと電車に乗り込む。

両手を広げて、電車の前に飛び込むほどの気力はなかった。

ガタンガタンと揺れる電車が連日の二日酔いの吐き気を誘ったが、それどころではなかった。


終わりの始まり

きっと主治医は入院を進めるだろう

そうなったら僕は終わりだ

今の僕では もう出られないだろう


軽快なメロディと共に目的地に着く。

『助けて』

その言葉を無視して重い腰をあげる。

『死にたい』

携帯で時刻を確認する

『知られたくない…恥ずかしい…嫌だ…』

心の中の僕がやたらと煩い。

駅の階段の方を睨み、足を無機質に動かした。


それからはスムーズだった。

待合室でうつむきながら診察の時間を待ち、主治医に思いをぶつけた。

何も変わらない日々、変化を与えた隣人、聴こえてくる異常に…


「一過性のストレスでしょうね」


主治医はその一言で片付けた。


「ストレスから…それなら誰でも起こる事なんですか?」

語尾に力を込め言い返す。

「黒崎さんの場合、軽度の鬱状態もあるからね…でも大丈夫でしょう」

「何が大丈夫なんですか?」

「だって貴女は幻聴が異常だと自覚されているからです。なので大丈夫ですよ」

「正直とても不安なんですが…」

「また様子を聞かせてください」

主治医はカルテに目を落とし記入し始める。

それ以上を言う度胸が無く、一言声をかけてから診察室を出る。


「ありがとうございました…」

機嫌をとる子供のように、静かに唱え静かに扉を閉めた。

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