第3話 神の知恵

「ワッハッハー!」

 地球神アースは笑っていた。

「まさか人間如きが神の下僕が神を超える力を手に入れるとは! なかなか楽しませてくれる!」

 神様は喜んでいた。退屈で時間を無駄に過ごすだけの日々が終わったからだ。

「神である私は挑戦者だ! 神である私が弱者なのだ!」

 神様は自分が弱い立場になったことが初体験だったので大いに楽しんでいる。

「見せてやろう! そして後悔するがいい! 神の力を超えたことを! もう止めることはできんぞ! 流れは加速して全てを飲み込んで行くのだ!」

 神様は知恵を振り絞って決戦を挑む。

「次の私の一手にどう対処する?」

 神の一手は碧に放たれる。


 20〇〇年。地球に異世界ファンタジーがやってきた。ある日、科学力は無意味になり、一部の人間は剣だの魔法だのが使えるようになった。

「ウルヴァーハンプトンか。ちょっとカッコイイかも。」

 碧は引き続きイギリスを調べていた。

「イングランドの中部に位置するウエストミズドラントの都市。」

 碧は調べものに集中していた。

「人口は26万人。」

 これが碧の日々の変化もない日常だった。

「碧。」

 そこに幼馴染の恋がやってきた。

「な~に?」

 碧は生返事を返す。

「ムカッ!」

 碧の悪い態度に恋は怒りを爆発させる。

「ウルフラムって何だろう?」

 碧はイギリスのことを調べるのに夢中だった。

「碧ー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 恋の叫び声が響き渡る。

「ギャアアアアアアー!?」

 碧は大声に鼓膜が破けたと思うぐらい驚いた。

「驚かすなよ!? 恋!?」

「呼んでも振り向かない、あんたが悪いのよ。」

 呆れる恋。

「おかしなニュースがやっているんだけど?」

「おかしなニュース?」

 恋は碧の部屋のテレビをつけた。

「ニュースをお伝えします。東京タワーが戦士と名乗る者に占拠されました。本日、東京タワーは臨時休業。職員などの関係者も避難した模様です。現在、東京タワー周辺は封鎖され、警察が東京タワーを取り囲んでいます。」

「なんだ!? このニュースは!?」

「ね、おかしいでしょ。」

 ニュースは東京タワーを異世界ファンタジーの戦士という者が占領したとのことだった。これから警官隊と戦士の戦いが始まろうとしている。

(また神様の悪戯だな!? 全く懲りない神様だ!?)

 神様は暇つぶしに現代世界を異世界ファンタジーに変えてしまおうと画策している。

「東京タワーに行ってくる!」

「碧ったら野次馬なんだから。」

 その時、臨時ニュースが流れる。

「臨時ニュースです! 今度は東京スカイツリーにド、ド、ド、ドラゴンが現れました!? これはいったいどういうことでしょうか!? 全く理解できない出来事が起こっております! なお日本政府は自衛隊に出撃要請を出したとの模様です! 周辺の住民の方々は避難してください!」

 東京スカイツリーにも異世界ファンタジーのモンスターが現れた。

「なんだって!?」

 一度に二か所も神様は悪戯したのだった。

「碧、どっちの様子を見に行くのよ? 早くしないと3か所目も変な生き物が現れるかもしれないわよ。」

「3か所目!?」

 恋の意見に碧は何かを感じ取った。 

(そうか!? 神様の狙いは・・・・・・俺が一人だということだ!? 一度に2か所も3か所も行くことができないのを見越しているんだ!?)

 全ては人間の挑戦者に成り下がった神様の策略だった。


「ここはどこだ!? なんだよ!? このでっけえ塔は!?」

 戦士は異世界ファンタジーからやって来ました。

「東京タワー? これがこのダンジョンんの名前か?」

 案内図を見て塔が東京タワーだと知る。

「塔を登りきってクリアしてやる!」

 戦士は東京タワーに入ろうとしました。

「なんだ!? この固い扉は!?」

 扉が閉まっていたので戦士は中に入ることができませんでした。

「クソッ!? 中は見えているのに!? これだけ強い結界が貼ってあるということは中にいるモンスターやお宝かなりビックなはず!」

 扉はガラスなので鍵さえかかっていなければ、普通に開きます。

「こうなったら強行突破だ!」

 戦士は剣でガラス扉を破壊する。

「よし! 待っていろよ! モンスターにお宝!」

 塔のダンジョンに・・・・・・東京タワーに入っていく戦士。


「なんじゃ!? こりゃ!?」

 碧と恋は東京タワーに着きました。

「扉が破壊されているわ!?」 

 東京タワーの入り口は破壊されていた。

「それに・・・・・・なんなんだ!? 警察ばっかりじゃないか!?」

 東京タワーを取り囲む警察。

「中に変出者が入りました。入り口を破壊している模様から凶器を所持している模様です。」

「もうすぐ自衛隊の戦車も来る。」

 中には機動隊もいた。最悪の事態に備えて自衛隊も来るらしい。

「何々!? 中にいるのは大怪獣!? それとも宇宙人!?」

 いいえ、異世界ファンタジーの戦士です。

「なるほど。現代社会に戦士がやって来ても凶悪犯か得体の知れない生き物になってしまうのか。ほうほう。」

 こんな時でもマイペースな碧。

「って、いけない。これも迷惑な神様の悪戯だ。戦車の一斉砲撃が始まる前に何とかしなくっちゃ。」

 碧は暇つぶしの神様のことを迷惑と思っている。

「恋、ちょっとトイレに行ってくる。」

「ええー!? これから警官隊が突入する良い所なのに。早く帰って来てよね。」

「ああ、分かったよ。」

 恋は野次馬であった。

「トイレ、トイレ。あった。」

 碧はトイレに駆け込んで便器のある個室に飛び込んだ。

「クソッ!? 神様め!? この世界を異世界ファンタジーにする気かよ!?」

 碧は神様の悪だくみと戦う決心をする。

「そうわさせるか! 俺は神を超える者だからな! 東京タワーの中に移動! ワープ!」

 碧の姿がトイレから消えた。


「ここは? 東京タワーじゃない?」

 碧は東京タワーにワープできなかった。

「ここはおまえの精神世界だ。」

 どこかで聞き覚えのする声が聞こえる。

「神様!?」

 碧を精神世界にやったのは地球神アースだった。

「どうだ? 楽しんでもらっているか? 異世界ファンタジーの戦士やドラゴンを現代社会に召喚してやったわ。ワッハッハー!」

「やはりお前の仕業か!?」

 神様は戦士やドラゴンを呼んで人間が慌てふためくのを見て楽しんでいた。

「もっともっと呼び寄せてやるぞ! 勇者や魔王はもっと強力だぞ。町なんか簡単に吹き飛ばしてくれるわ!」

「やめろ!」

「なんだと? 神である私にケンカを売ったのはおまえではないか? 人間。」

「何!?」

「殴ったら殴り返される。これは人間社会の当然の原理だ。殴って殴り返されないと思っているのは自分のことを偉いと調子に乗っているからだ。これも全て、おまえに教えられたのだよ! ワッハッハー!」

 相手を殴ったら、相手に殴り返す権利を与える。

「おまえにこの世界を救うことができるかな? やれるものならやってみろ! ワッハッハー!」

「やってやる! 俺はこの世界を救って見せる!」

 碧は神様に挑まれたので挑み返す。

「無理だな。目の前ばかり見ている者に、この世界は救えんよ! ワッハッハー!」

 笑うだけ笑って神様は消えていった。

「クソッ!? なんであんなのが神様なんだ!?」

 碧は神様の存在自体に疑問を抱く。


「えい!? やあ!? なんだ!? この薄気味悪い蝋人形たちは!?」

 東京タワーには変な人形ばかり置いてあった。

「今度は海賊か!? 相手に取って不足なし! いざ! 勝負だ!」

 たまにワンピースの催しなんかもやっていたりする。

「このままでは連戦連戦で疲れ切ってしまう!?」

 戦士は頭が弱い体力バカなので動かない敵と戦い続けていた。

「薬草も使い切ってしまった!? どこかに道具屋はないのか!? 宿屋はないのか!? 回復魔法を使えるモンスターはいないのか!?」

 これが異世界ファンタジーの回復の考え方である。

「不味い!? このままでは体力が尽きてしまう!? 早く塔を突破しなければ!?」

 戦士は焦っていた。

「なんだ!? この動く床は!?」

 エスカレーター。

「私をどこに連れていく気だ!?」

 エレベーター。

「はあはあはあ・・・・・・なんて恐ろしいダンジョンなんだ!?」

 こう考えれば現代社会も面白いかもしれない。


「こいつが戦士か?」

 碧は戦士を見つけた。

「zzz。」

 しかし戦士は初めて見るダンジョンの仕掛けに疲れ切っていた。

「次があるんで、さっさと片付けよう。」

 碧は次の東京スカイツリーのドラゴンの存在を知っている。

「神の力を超える者が命じる! 戦士よ戻れ! カムバックウォーリア!」

 碧は地球神アースを超える者として戦士を異世界に送り戻す魔法を行使する。

「一丁上がり。」

 戦士は光の中に消え去った。

「さあ、次のドラゴンを退治しに行かないと。でも、その前に恋に会わないと。」

 大忙しの碧。

「やあー!」

 その時、大勢の人間の足音が聞こえてくる。

「なんだ!? なんだ!? まさか!? 警官隊の突入が始まったのか!?」

 碧は完全に包囲されていた。

「ヤバイ!? 戦車の大砲を撃たれる前に退却だ。テレポーテーション!」

 碧は魔法で瞬間移動して東京タワーから姿を消した。


「ただいま。」

 碧はトイレから戻ってきた。

「遅い! もう警官隊が突入しちゃったわよ!」

「わ~い。そうなんだ。突入するところを見たかったな。あははは。」

 とぼける碧。

「俺は東京タワーの中にいたっちゅうねん。」

「碧、なんか言った?」

「言ってません。」

 普通の人間の恋と普通の人間でなくなった碧の少しのズレ。

「ごめん。俺、腹の調子が悪いから帰るわ。」

「ええー!? 下痢なの!? 下痢なの!? 碧、汚い!?」

「仕方がないだろう!? 生理現象なんだから!?」

 下の話をするぐらい仲の良い碧と恋。

「じゃあな。」

 碧は東京タワーから立ち去った。

「警察と衝突が起こる前に急がなくてわ! 東京スカイツリーにワープ!」

 碧は魔法で瞬間移動した。

「よし! 今度は東京スカイツリーに行ってドラゴンを見なくっちゃ!」

 恋は次の目的地に旅立った。


(ワッハッハー!)

 その様子を見ていた神様が大笑いしている。

(戦士を倒すなど想定内だ。)

 戦士を倒されても余裕で笑っている神様。

(次は東京スカイツリーに行ってドラゴンを倒すんだろう? そんなことはお見通しだ! だが、おまえはまだ気づいていない! 私の本当の目的に!)

 神様の真の目的とは?


「あちゃ~!? 始まっている!?」

 東京スカイツリーにやって来た碧。

「撃て!」

「ガオー!」

 しかしドラゴンと自衛隊の戦車や戦闘機の攻撃が始まっていた。

「マジか!? こんな街中で!?」

 次々と打ち込まれるミサイル。しかし命中しなかったミサイルが周辺の街並みを破壊していく。

「大変なことになりました! 人類史上初めてドラゴンの攻撃にさらされています!」

「臨時ニュースです。日本政府はアメリカ軍にもドラゴン討伐の援軍を要請しました!」

「未知なる生物の襲来です! 現場から緊急生中継でお送りしております!」

 現場にはマスコミのヘリコプターがたくさん飛び、テレビには臨時ニュースが世界中のお茶の間に流れた。

「神様の狙いは人類をパニックに陥れることか?」

 まだ碧は神様の真の目的に気づいていなかった。

「まあいい。今はあのドラゴンを何とかすることだけを考えよう。」

 碧は集中して魔法を発動させる。

「神の力を超える者が命じる! ドラゴンよ戻れ! カムバックドラゴン!」

 碧の言葉にドラゴンは光に飲み込まれて異世界に帰って行く。

「ふう、終わった。」

 既にスカイツリーは破壊されまくって傾いていた。

「みなさん! 人類の勝利です! 自衛隊とアメリカ軍の共同攻撃がドラゴンを倒しました!」

 ということに世間的にはなっている。

「おお! やったー! 勝ったぞ!」

 もちろん世界中でドラゴンを倒したという報道はテレビにネットで拡散。あっという間に世界中は喜びに包まれた。


(ワッハッハー!)

 天界でほくそ笑む神様。

(やりおった! ドラゴンを倒しよったぞ! ワッハッハー!)

 神様の高笑いが止まらない。

(あの人間め! 神である私を超えると言いながら、知能レベルは私を超えられなかったようだな! 人類の誕生から死ねないで生きている私を舐めるなよ!)

 いったい何才なんだ? 神様は。

(新型ロナウイルスで世界がパンデミックに陥り、全ての生活様式が変わったように、戦士やドラゴンの登場は人類の生活を全て変えるぞ! これで私が退屈しなくてよくなるというものだ! ワッハッハー!)

 これが神様の狙いだった。何も無ければ世界は変わらない。しかし戦士やドラゴンの登場は人類に変革をもたらした。


「碧! 見た! 見た! 人類がドラゴンを倒したのよ! 木端微塵に粉砕されたのよ! キャッハー!」

 現地の野次馬の一人だった恋。

「そ、そうですね。良かったな。」

(本当は俺が倒したんですけど。あはは・・・・・・。)

 ドラゴン退治の真相は碧だけが知っている。

 つづく。

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