第307話:カオルン強襲
神楽が妹との悲しい再会をした事など知りもしない重清と聡太は、翌日の放課後、恒久を伴って『喫茶 中央公園』へとやって来ていた。
「なるほどな。そのアイデア、面白いじゃねーか」
重清が思いついたショウへ卒業式に渡すプレゼントのアイデアを聞いた恒久は、身を乗り出していた。
「そうでしょ?シゲにしては、面白いと思うんだよね」
「え、おれにしては、ってひどくない?」
聡太の辛辣な言葉に、プレッソを頭に乗せたまま、重清は抗議の目を向ける。
ちなみに本日、チーノは部活後直ぐに
「それで、グラさんのとこに行ったってわけか」
恒久は納得したように頷いていた。
「そ。ちなみにこれが、グラさんからの情報ね。でも、これとプレッソたちから聞いた話じゃ、ちょっと足りないんだよね」
「まぁ、確かにな。待てよ・・・・」
恒久は重清の言葉に、考え込んだ。
「なぁ。俺昨日、伊賀本家に呼び出されたんだけどさ・・・」
「あっ、そうだった!ツネ、大丈夫だったの?」
恒久が話し始めると、聡太が心配そうに恒久へと目を向けた。
「あぁ、とりあえずは大丈夫だった。なんか、俺が六兵衛さんトコに行ってるのがバレて、呼ばれたらしい」
「なーる。でも、『雑賀本家当主は、俺の弟子なんです』なんて言っても、信じてくれなかったんじゃない?」
重清が笑いながら言うと、
「いや、それがそうでもやくてな」
恒久は重清に苦笑いを返した。
「何があったの?」
そう言う心配そうな聡太に、恒久は笑顔を向ける。
「ま、心配されるようなことは起きてはないから安心しろ。とりあえず、ショウさんのプレゼントにも関係しそうだから手短に話すぞ?」
そう言って恒久は、伊賀本家との出来事を話し始めた。
「―――ってわけだ」
恒久が話し終えると、重清が目を輝かせて立ち上がった。
「カッコいい!幻獣の術とかめちゃくちゃカッコいいじゃん!!いいなぁー、伊賀家!雑賀家なんて、『百発百中の術』だぞ!?いや、それも凄いとは思いますけどねっ!!」
「シゲ、今はそこじゃないよ」
そんな重清に、聡太は冷ややかに言った。
「じゃぁどこ!?おれはどこに食いつけばいいの!?」
「いや、食いつく場所は間違ってないけどさ・・・・ツネが覚えた術、使えそうじゃない?」
聡太がそう言って、重清を見つめた。
「・・・・あっ、そうか!いける!これいけるよ!これなら、ショウさんへのプレゼントのいいヒントになるっ!!」
「だろ?」
重清の言葉に、恒久が得意そうに笑っていると。
「あらぁ〜、こんな所で会うなんて、奇遇ねぇ」
そんなほんわかした声が、重清達にかけられた。
その声の主に目を向けた重清達は、
「「「カオルン!?」」」
驚きの表情で叫んだ。
重清達の視線の先にいたのは、2中保健室の養護教諭、花園薫(通称カオルン)であった。
「あらぁ、遂にソウ君も、私の事『カオルン』って呼んでくれるようになったのねぇ」
花園は、顔を赤らめて聡太を見つめていた。
(相変わらずオモテになりますな)
恒久がジト目で聡太に囁くのを誤魔化すように、聡太は花園へと声をかけた。
「な、なんでここに?」
「あらぁ、私だってコーヒーくらい飲むのよぉ」
花園は顔を膨らませて、聡太へと返した。
((クソ、可愛いなおい!))
そんな花園の姿に、重清と恒久はそう考えながらも、聡太と共に花園に心の中でつっこんでいた。
(((違う、そこじゃない)))
と。
そうそこではないのだ。今重清達がいるのは、『喫茶 中央公園』の忍者線溶席なのである。
そこは、平八の作った術、『
「もぉ〜、なんかこの席、凄く嫌な感じよ?もしかして、幽霊でもでるんじゃないのぉ?」
花園はそう言いながら、辺りをキョロキョロしていた。
「いや、それなのによくここまで来たな」
恒久がボソリと花園につっこむと、
「私の聡太くんへの愛はぁ、幽霊なんかには負けないのよぉ!」
花園は聡太を見つめながら、言い切るのであった。
「愛とか言っちゃったよ!」
恒久は、そんな花園に思いっきりつっこんだ。
流石は伊賀本家当主からも認められたつっこみ番長。
軽くストーカーと化した花園へも、容赦なくつっこむのである。
「それでぇ、男3人で、何の良からぬ相談なのぉ?」
「いや良からなくねぇしっ!」
「あ、先輩への、卒業プレゼントの相談なんです」
すかさずつっこんだ恒久を無視して、聡太が花園へと答えた。
「あらぁ、それは良いわねぇ。私も話に混ぜてもらおうかしら」
「いや、もう決まっちゃったから、大丈夫だよ」
無理矢理席につこうとした花園を、重清がそう言って止めた。
「それは残念ねぇ。せっかく、聡太君とゆっくりお話できると思ったのにぃ」
「やっぱそれが狙いかよっ!おい、シゲ、ソウ!行こうぜっ!」
恒久がそう言って立ち上がると、2人も立ち上がり、重清は日本酒を味わうロイを肩に載せ、
「じゃ、おれらは行くね!カオルン、1人コーヒー楽しんで!」
そう言って花園に手を振って、『喫茶 中央公園』を後にした。
「もぉ、『1人』は余計よぉ」
花園はそう言いうと、その場を離れて、1人席へとついて明美姉さんに声をかけた。
花園に呼び止められた明美姉さんは、忍者専用席に入り込んだ花園に驚きの目を向けつつも、直ぐに接客モードへと切り替えて、花園のオーダーを聞くのであった。
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