第174話:4人寄れば?

キャンプ場襲撃も過ぎ去り、夏休みも終わりに差し掛かろうとしているある日。


忍者の部室には、忍者部1年生の4人が勢揃いしていた。


新たに師を得たソウとアカは、それぞれがオウ、雅の下で修行をすることもあり、これまでよりも忍者部へ赴く機会が少なくなっていた。


またそんな2人に触発された恒久も、正式に父への師事を仰ぎ、2人と同じく忍者部の時間を父との修行に使うことが増えていた。


そのため、こうして全員が揃うのが久々であった4人は、しばしの間、部室で近況報告を行っているのであった。


「なーんだ。みんな新しい師匠ができたから、色んな術をガンガン覚えてるのかと思ったら、そうでもないだなー。」

それぞれの話を聞いていた重清が、安心したような声を出した。


「まぁうちの場合は、親父が使える伊賀家固有の忍術のほとんどはもう教えてもらってるってのもあるんだけどな。

でも、アカまで同じような状況だとは思わなかったよ。お前の師匠は、あの『天才忍者』なんだろ?しかもアカにあれだけ優しいんだ。術だってガンガン教えてくれそうなもんなのにな。」

恒久が、少し驚いた表情を浮かべながらアカに目を向けた。


「まぁ、わたしも期待してなかったと言えば嘘にはなるけどね。実際、まったく術を教えてもらっていないわけでもないし。でも、今はまだ基礎的な力の修練に集中したほうがいいだろうってみーちゃんは言ってるのよね。」

「あ、それおじいちゃんも言ってた。」


アカの言葉に、ソウがうなずいて同意した。


「っていうかソウ、こういうところでも『おじいちゃん』なのね。」

「うん。なんだかもう、癖になっちゃって。」


「苦労してるわね。」

「お心遣い、痛み入ります。」

アカの言葉に、ソウは苦笑いを浮かべてそう返した。


「そういえばよー。」

そういいながら恒久が、ソウを見る。


「ソウは自分の力だけで術の契約をしたんだよな。それって、どんな感じだった?」

「どんなって・・・正直、無我夢中だったからね。どうしたのさ、急に?」


「そう、か。いやな、俺、自分で術の契約したことないから、どんな感じなのかなって思ってな。」


「ちょっとツネ。術の契約だったら、わたしだってやってるわよ?」

「おれだってやってるぞ!!」

アカと重清が、恒久に抗議の声を上げる。


「重清はあれだろ。雑賀家の総力を結集して覚えたんだからお前の力じゃないだろ。アカは・・・そうだっけ?」


「やっぱり忘れてる。わたしは、ケンさんとの模擬戦の時に、炎拳の術を契約したのよ?」

「あ、そういえばそんなこともあったな。アカは、その時の状況、覚えてるのか?」

アカの言葉に、恒久が当時の事を思い出して笑いながらアカを見た。


ちなみに重清は、恒久の言葉に反論の余地もなく、ただ流れるように自身の抗議を取り下げて恒久同様アカを見ていたようだ。


「まぁ、わたしもあの時は無我夢中だったからね。」

「なんだよ、2人とも無我夢中じゃねーか。あれか?術を契約するのは無我夢中じゃないとダメなのか?」

恒久が、ため息交じりにそういうと、


「別にそんなことないと思うぞ?おれは、普通にゆっくりと覚えたし。まぁ、どーせ兄ちゃん達の力を借りてはいますけどね。」

重清が若干口をとがらせながらそう言った。


「シゲ、拗ねないで。シゲは自分だけの忍術を作ってるんだから、少しは自信持ちなよ。」

「さすがソウ!そうだよな!おれはおれだけの忍術を持ってるんだよな!!」


「兄2人のおかげでな。」

「ちょ、ツネ!せっかく気分良くなってるんだから邪魔しないでよっ!!」


「うるせーよ。今お前の気分の良さとか関係ないんだよ!」

「え、それひどくない!?聡太君、今の恒久君のご発言、どう思われますか?」

「いや知らないよ!」

「ちょっとあんた達、話が逸れてるわよ。」


「「「あ。」」」

アカのつっこみに、ソウと恒久が重清を見つつ、3人は声を揃える。


「なははは。またやっちゃった。すみません。恒久君、話を戻してくれたまへ。」

「いやなんか偉そうだな!」

重清の言葉に、恒久がつっこんでいると、


「そういえば、おじいちゃんが契約の時に言ってたな。」

ソウがそう言って話を戻した。


「術を作るのには、心・技・体の力の配分と、イメージが大事だって。」


「「「イメージ??」」」

聡太以外の3人が声を揃えて聡太に視線を集中させた。


「うん、イメージ。力の配分とそのイメージが合致したら、術ができるんだって。で、それが今までにない術だったら、シゲみたいに自分だけの術になるし、ぼくみたいに契約に条件があったら、その条件を満たして初めて契約に至るみたい。」

「わたしの場合は、炎拳の術は協会が管理する術で、しかも条件がなかったからその場ですぐに使えたってわけね。」


「そういうことだね。」

ソウが、アカの言葉に頷いてから3人を見渡した。


「ねぇ。今日はみんなで、術の作成に挑戦してみない?」


「「「いいね!!」」」


そんなわけで、久々に集まった4人は、新たな忍術の作成に挑戦することになったのであった。

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