第125話:お花畑デート
「重清君、早く早く〜!」
「あっはっはぁ〜、琴音ちゃぁ〜ん、そんなに引っ張らないでよぉ〜」
重清と琴音は、綺麗なお花畑を2人で手を繋いで駆けていた。
(―げ―――し―――――――)
(あぁ、琴音ちゃんとのお花畑デート、最高ぉ〜)
別の意味でお花畑な重清が、恍惚とした表情で琴音を見つめていた。
(琴音ちゃん、かわええのぉ~。)
「な~に、重清君。私の顔なんてじっと見て。」
「え?ううん。何でもないよっ!!」
にやけながら、重清は答える。
(しげ―――――かり――――)
(あれ?おれ何でお花畑デートしてるんだっけ?
さっきまで、中忍体じゃなかったっけ?)
「重清君!せっかくのデート中に、考え事なんかしないでよ〜」
「あ、ごめ〜ん琴音ちゃ〜ん」
混乱しながらも、重清は琴音に笑顔を向けなおす。
(――きよ――――――なさ―)
「あぁー、楽しいなぁ〜」
(重清っ!しっかりしなさいっ!)
「うぉぃっ!!」
「重清君、どうかしたの??」
「へっ?いや、何でもないよっ!」
(びっくりした〜。今のはチーノの声?)
(よかった。重清、私の声、聞える??)
(聞えるよ!チーノ、せっかくのデートの邪魔しないで――――)
(何を言っているの!あなたは今、中忍体の真っ最中なのよっ!)
(へ??でも、おれは現に今、琴音ちゃんとデートを・・・)
(その琴音って子に操られて、幻想を魅せられているのよ!
今あなたの心の力を、私が中から借りることでこうしてあなたと話せるようになっているけど、それだけだとあなたにかかった術は破ることができないの!あなた自身が、術を破ろうとしないと!)
(そ、そんなこと言ったって、せっかくデートを楽しんでるのに!)
(だから、そのデートは幻なのよっ!!)
(えぇ〜。幻でも、琴音ちゃんとデートできるのなら・・・)
(あぁ!もぅ!!しょうがないわね!!
重清、あなた、私と戦ったときの、私の姿、覚えてる?)
(へ?何を急に―――)
(いいから!覚えているの!?)
(エロ姉ちゃんモードのチーノだろ?そりゃ覚えてるよ!)
(あの白衣の格好、あなたが好きそうな格好を意識してたんだけど?)
(そうなの!?いや、確かにあれは、うん。よかったね。)
(でもあれね、胸のあたりがすっごぉくキツかったのよ?
もう、あと少しではみ出しそうなくらいに。)
(は、はみ出す!?何が!?)
(そんなこと、私の口から言わせるの?
でも、お・し・え・な・い。
もし次にはみ出しそうになったら、あなたに手で抑えてもらおうかしら。)
(て、手ですかっ!?)
(そ、手。生の感触、味わって見たくない?)
(そ、それは・・・)
(よしっ!今よ重清っ!心の力を全開にさなさいっ!!)
(手で、はみ出す生乳をっっ!!それはまさに――――)
「手ブラぁーーーーっ!!!」
風魔コトが、自身が『魔性の術』で操っている重清の手を引いて1中の陣地へと向かっていると、突然重清がそう叫んで、手を振りほどいた。
振りほどかれた重清の手は現在、自身の胸元でモニュモニュと何かを揉むような手つきなのである。
「なっ!?」
突然のことに、コトは目の前の光景を、驚きと侮蔑の混じったような目で見つめていた。
「まさか、私の魔性の術を解くなんてっ!それにしても、その手つきなんか嫌っ!!」
「あっ。」
コトの最後の言葉に、重清は正気に戻って動かしていた手を止め、コトを見つめる。
「琴音ちゃん・・・」
「重清君、どうしたの?」
コトがニコリと重清に微笑みかける。
「琴音ちゃん、騙したんだね。」
「うん、そうなの。ゴメンね、重清君?」
そう言って口元に指をあて、可愛く謝るコトを見て重清は、
(くっそー!可愛いなおいっ!)
1人悶えながらもコトに問う。
「全部、ウソだったの??」
「う〜ん、ほとんどはウソだったかな?でも、告白されてどうすればいいか分からなかったのは本当よ。告白されるの、初めてだったから。」
「いじめのことは?1中の人達からいじめられてるってことは!?」
「それは、ウソ。みんな、良くしてくれてるのよ。」
コトは、少しだけ、ほんの少しだけウソを交えてそう返した。
もちろんそんなことに気付かない重清は、その言葉を聞いて、大きく息を吐き出した。
「良かったぁーー!」
「え?」
---あとがき---
明日は午前3時更新です!
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