第5話
外は骨の髄まで凍るほど、寒かった。もう少し、厚着をして来るべきだったと、今更後悔。
僕は手のひらに息を吹きかけて、寒さを紛らわしていると、隣を歩く彼女が言葉を発した。
「それでさぁ、願い、決まった?」
「いえ、まだです」
「全く、早く決めてくれよな」
僕は考えた。もし、幼なじみを守るための自己犠牲のお礼として、願いを叶えると言っているのなら、それはありがた迷惑だと言う物だ。
僕は僕の道理に従っただけであり、感謝されるのは嬉しいが、物質的な礼には及ばない。
その旨を伝える。
「なぜ、貴方は僕の願いを叶えようとするのですか? もし、アイツ(幼なじみ)のことを気遣ってそう言ってくれてるなら、僕は気にしてませんので」
「うん? なんのことだ?」
「貴方はアイツの親戚か何かですよね? それで、僕の行いを評価してくれて、その恩返しに願いを叶えようって言ってくれてるんですよね?」
「いやいや、アタシはお前の幼なじみの親戚でもなんでもないけど」
僕は驚いた。そして、思ったことをそのまま口にする。
「貴方は一体、何者なんですか?」
すると、彼女は立ち止まり言った。
「アタシは、人間の精力を代償に願いを叶える悪魔さ」
彼女の背中から、大きな羽が二枚バサっと広がる。蝙蝠のような悪魔の羽だ。
「悪魔?」
「そう、悪魔。この羽、見えない?」
「見えますけど……なんで、悪魔さんが僕の願いを叶えようとするのですか?」
「数ヶ月前、アタシはお前の幼なじみに召喚された。しかし、知っての通り、アタシの召喚者は自ら命を絶ち、成仏しちまった、アタシが願いを叶える前にな。そうなった場合、悪魔の規定的には、召喚者が一番大事に思ってる奴を調べて、ソイツの願いを叶えることになってるんだ。だから、アタシはお前の願いを叶える。そうしないと、アタシはいつまで経っても、魔界に帰れないからな」
「はぁ……」
「なんだ? 信じられないって顔つきだな」
「それは……まぁ、そうですね」
すると、彼女は溜息を吐き、僕の背後に移動し、腹に手を回す、背中に柔らかい何かが当たる感触がした。
そして、羽がバサバサと大きく羽ばたき、辺りに旋風が巻き起こり、浮遊し始める。
「空でも飛んだら、お前も信じられるだろ」
そう言って、彼女に連れられ、僕は空を駆った。
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