2話 アメリア視点1
ジャック様と一緒に冒険していて最初は楽しかった。でも何か物足りない。私が思っていた冒険は心置きなく話せる仲間。だけどジャック様とはそんな関係になることは無いと思う。聖女であっても勇者とは立場が違う。それに比べてクリスの方はどう? エルフの人と仲良くしていた。本当は私もあんな冒険がしたかった。でもそれはもうかなわない。
勇者パーティから抜けるということはそれだけの対価も必要。それこそ戦力外でパーティから外されるならわかるけど、そうじゃない場合世間の人たちはなんて思う? 世界を救わない聖女。もしくは勇者を見捨てた聖女。そう思われてもおかしくない。
「はぁ~」
そう思っているところでクリスのパーティメンバーの人が私のところに来た。
「助けてほしい」
「え?」
会った時に私たちは拒絶し合った。プライドが高い女だと思った。それなのに今の彼女はどう? 切羽詰まる勢いで私に頼みに来た。だから冷静に話を聞こうと思った。クリスと言う言葉を聞くまでは。
「クリスが...。クリスが危ないの!」
「クリスが! どこ? 早く場所を教えなさい!」
クリスと言う一言で頭が真っ白になる。クリスが危ない? 私の想像していた通りになった。だから冒険者にはなってほしくなかった。でも今の状況になってしまった以上クリスを助けることが最優先。
「すぐ近くの宿にいるから来て」
「早く案内して」
私はエルフの女性についていく。その時ジャック様とも偶然会って一緒に向かう。部屋に入った時私は絶望しかけた。寝たきりの状態で痩せこけた顔。そして目もちゃんと開けていない。
「クリス大丈夫なの?」
震えつつも質問する。ここでもう無理かもとか言われてしまったら...。もう生きることを諦めていたらどうしようと思ってしまう。するとクリスは弱弱しい声で言ってくる。
「うん。でもちょっとキツイかな...」
「待ってて。私が助けるから!」
「ありがとぅ」
この状況になっている幼馴染を助けたいと思うのは当然だ。でもそれ以外に2つの感情も出ていた。久々に話せて嬉しい感情とクリスと一緒に冒険をしていた仲間はなんでここまでクリスに無理をさせた怒りの気持ち。
全体的にクリスを見てわかった。これは普通の呪いじゃない。体中から精気が消えていくのが分かる。だからまず最初に呪いの進行を収める魔法と痛みを極力なくす魔法をかける。
魔法をかけた後外に出てもらって本格的に呪いを解き始める。呪い全般を治すことができるスペクトルヒール。日光が出ているところで尚且つ障害物があまりないところがいい。だけど今回はそんなこと言っていられる場合じゃなかったため、宿から近い広場に行きスペクトルヒールをかける。すると呪いが消えていくのが分かり、クリスの苦しそうな顔もなくなっていった。
(よかった...)
こんなところで幼馴染をなくしたくない。かけがえのない幼馴染。そう思った時、クリスの仲間に怒りが込み上げてきた。そしてクリスになんで呪いにかかったか問いただすと、エルフの女性が言う。
「それは私のせいなの! 私をかばって...」
「そういうことね...。私はクリスに冒険者になってほしくなかった」
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