47話・ただいま
気がつくと、私は自分の部屋の床に座っていた。
「帰って……きた……?」
私は急いで、充電器にスマホを置いた。
あ、これじゃあ話しにくいかな。
ケーブルの充電器を引っ張りだしてスマホにさそうとした時だった。画面が起動して、日付と時間が見えた。
あれ、バグったのかな? 一時間しかたってない?
どういうことだろうと、私はネットで今日の日付を調べた。それはスマホが示す日付と同じで。
どういうこと? 時間が巻きもどったの?
私は、バタバタと一階におりて母親を探す。
「お母さん」
「何? ご飯はもうちょっと待ってね。あ、お風呂でもいってきたら?」
いつも通りのお母さんだ。1ヶ月行方不明だった娘に言う言葉じゃないのはすぐにわかる。
「うん……」
「あら、カナ。髪が伸びてない? いつ切ったの? 次の予約早めてもらえば?」
「うん……」
私は階段をかけのぼり、スマホを握った。
そして、タツミを選んで、通話ボタンをタップする。
「カナ?」
タツミの声。偽物じゃない、本物のタツミだ。
「タツミ――、ごめんなさい!」
ーーー
「直接会って話したいって、何の話だ?」
「うん、スマホだけじゃ、やっぱりダメだと思って――」
タツミの家の近くの公園に来ている。
二人でベンチに座り、話す。
「私ね、タツミにすごいわがまま言ってた。ごめんなさい。アリスに嫉妬してた。ごめんなさい。意地悪言ってた。ごめんなさい。あとね、――」
次を言おうとしたら、ぎゅっとタツミに抱き締められた。
「別れるつもりなのか?」
私は首を横にふって、腕の中から彼を見上げた。心配そうな顔の、いつも優しい大好きなタツミがそこにいる。
「違うよ、大好きって伝えたかったの」
そう言うと、タツミの鼻と耳は赤くなった。
「別れ話だと思ってた……。オレ、付き合う時、大事にするって決めてたのに。カナに悲しい顔をさせたり、つまらない感情で傷付けたりしてしまったから――」
「ううん。私も、一緒だよ。だから、ね。一緒に成長しよう。まだまだ子供なんだよ。私達。恋愛の子供。いつか、大人の恋愛になれるように頑張るから……、だから、これからもよろしくお願いします」
「――オレ、頑張るよ。カナの笑顔が好きだから。いっぱいいっぱいカナを笑わせる。約束する」
指をきゅっと絡ませて私達は
ーーー
魔法陣のある部屋から戻り、私は仕事に戻る。
これでカナ様の護衛は終わったのだ。
そもそも、違う世界の住人。私達とは違う。
同じ世界の愛する人と知らない世界。天秤にかければどちらが大事なのか、比べるまでもない。
「これでよかったんだ」
そう、元の世界に戻って、彼女は笑顔になったはずだ。ただ、それを確かめる術を私は持たない。
カナ様と同じ世界に行き確かめたい。そして、カナ様の側に――。
もし、次の生があるのなら――。
叶わぬ願いとわかっている。私は彼女の笑顔を思い浮かべ、これで最後にしようと決め、彼女にもらったハンカチを机にそっとしまった。
ーーー
あれから三年後。
海の見える明るいチャペル。
私は真っ白なドレスを着て、沢山の人の間をお父さんと一緒に進む。
横を通る度に皆が撒いてくれる小さな花びらが、ひらひらと舞い落ちて私を飾っていく。
「誓いのキスを――」
緊張して震える彼の手を見て少し笑いながら私はヴェールがあがるのを待つ。
ちょっとだけ時間がかかったけれど、タツミの顔が見えた。
私達は、今日、夫婦になる。いろんなことがあって、いっぱいケンカもして、途中まさかの異世界に行って王子様から求婚されたりもして――。でも、ようやくタツミと結婚できた。
私は今、すごく笑顔だと思う。
この笑顔で、よかったのかな?
私は少しだけ、リードのことを思い出していた。
「結婚証明書にサインを」
タツミが名前を書く。私はその横に名前を書く。
証明書には仲良く二人の名前が並んだ。
【
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