その機械、解読いたします。

@bun_tororoimo

第1話 カビだらけのファイル

「ねえ、古町こまちさん。」

作業着姿の、一見すると学生に見えるほど小柄な少年が大型のファイル冊子をめくりながらつぶやいた。椅子に座る彼の横には、彼が手にしているものと同じようなファイル冊子が何冊も奇跡的なバランスで積まれていた。

「ん。」

古町と呼ばれた作業着姿の初老に見える男が返事をする。

「僕たち、なんでこんなことをしてるんでしょうね。」

少年がファイルをめくりながら尋ねる。

「なぜってそりゃ、まともに書類残してねえからだろ。」

そう古町は言いながらかけていた老眼鏡を外す。

「大体、ふつうは資料て物はきちんと分別してインデックスつけて保存するもんだろ。なんで予算議事録と図面が交互に挟まってんだよ。見てみろよ、これ。カビにやられちまって読めねぇし。」

目頭を押さえ揉みほぐしながら続ける。

仁科にしな君よりも年上だろ、多分この資料。」

「たぶんそうですね。この資料、2008年作成てなってますし。」

仁科と呼ばれた少年が背表紙を見て答える。

「休憩だ、休憩。昼飯食べてからずっと仕様書探してるだろ。」

そういって古町は立ち上がって背中を伸ばす。そうしましょうと仁科もつぶやき、立ち上がった。

ファイルが積み重なった山の間をすり抜け部屋の外に出る。外に出ると日が暮れかかっていた。

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