1月26日(火曜日)カフェで何を注文する?


 火曜日の夕方。バレンタインイベントの打ち合わせで一緒になった結衣花とカフェに入った。


 ガラス張りの壁際の席に座った俺達はメニューを手に、なにを注文するか考えていた。


 だが、さっきから結衣花はケーキの写真をチラチラと見ている。

 きっと食べたいのだろう。


「結衣花……。欲しいなら注文してもいいんだぞ」

「ううん。真面目な話だし我慢する」

「別にケーキくらいいいだろ」


 今日は楓坂が巻き込まれたという週末の災いについてゆかりさんから話を聞くことになっている。

 そのこともあって結衣花は進んでケーキを食べようとしなかった。


「じゃあ、俺は注文しよ」

「あ、ずるっ!」

「別にズルくないだろ」


 俺はケーキの写真が掲載されたメニューを開く。


「……お……お兄さんは何を注文するの?」

「気になってるのはチョコケーキだけど、イチゴのショートケーキも捨てがたいな」


 すると結衣花はスッとメニューの中央を指で示す。 


「マスカットショートケーキにしなよ」

「どこから湧いてきた選択肢だ」

「私が食べたい」

「もうそれも注文するから食ってくれ」


 結局、チョコケーキとマスカットショートケーキを注文して食べることにした。

 ケーキを食べながら俺達は雑談をする。


「でもゆかりさんを呼び出してしまうことになって悪い事をしたな」

「それは大丈夫。近くでお肉が超特売だから、最初からこっちに来る予定だったみたい」

「ほぉ。……って、電車を使って肉を買いにくるつもりなのか? 交通費でマイナスになるだろ」


 ここから結衣花の家までは電車で十五分の距離だ。

 往復のことを考えれば、運賃だけで肉が買える。


 いや、もしかしてこの近くでパートをしているという可能性もあるか。


 ……と思った瞬間、凄まじいプレッシャーを感じた。

 おそるおそるガラス張りの向こうを見ると、ママチャリに乗ったゆかりさんがやってきた。


「ゆかりさん!?」


 え……、マジで。電車で十五分ってかなりの距離だぞ……。

 とても自転車で移動できる距離じゃないと思うんだが……。


 ゆかりさんはスーパーの袋を手に持って、カフェの中に入ってきた。


「待たせたわね。ちょうど帰り道が待ち合わせ場所だったから助かったわ」

「ゆかりさんのママチャリって特別使用なんですか……」


 見た目はママチャリだが、ブースターでもついているんじゃないだろうな……。

 この人の体力がむしろ都市伝説級なんだけど……。


 席に着いたゆかりさんに店員が声を掛ける。


「ご注文はお決まりでしょうか?」

「任せる。以上」

「え? あ……はい……」


 どんな注文の仕方だよ!!

 男前すぎてビビるわ!!


「それで週末の災いのことについて知りたいって聞いたのだけど……」

「はい。昔、楓坂になにがあったのか知りたくて……」


 週末の災いとは、新しい都市伝説を見つけた人は毎週土曜日に不幸が襲い掛かるという内容で、それから逃げるには現在ある都市伝説の正体を暴かないといけないというものだった。


 もしかすると楓坂は今もそのことで悩んでいるかもしれない。俺と結衣花は彼女を助けるために調べることにした。


「私も旺飼君に聞いた話だからそこまで詳しくないのだけど、週末の災いはただの噂で実在はしないわ。当たり前だけどね」

「そうですよね」

「でも、もう一つ法則があるのよ。たぶんそれが関係しているんだと思うわ」


 ゆかりさんは運ばれてきたコーヒーを飲みながら、ゆっくりと話す。


「週末の災いによる不幸は、対象者に好意を抱いた人に襲い掛かるというものよ」


 続けて結衣花は補足を入れた。


「夏目君もそれを言ってた。楓坂さんが週末の災いの被害者なら、一緒にいると巻き込まれるかもって。夏目君は冗談のつもりで言ったみたいだったけど」


 なるほど。それで結衣花は怒ったわけか。

 でも、信憑性もないようだし、どうしてそんなことを楓坂は信じているんだ?


 すると、ゆかりさんは驚きのことを話す。


「でも一件だけ、例外があるのよ……」



■――あとがき――■

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・♡応援、とても励みになっています。


次回、ゆかりさんがいう例外とは!?


投稿は朝7時15分。

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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