第48話 ドルモンド侯

リムラ村の中央広場に

葵が到着すると

そこには人々の希望に満ちた笑顔があった


かつて廃村化し

人々から希望が失われ 

争いと閉塞感しかなかった村が

1年半ぶりに 息を吹き返したのである!

葵が愛したリムラ村

村人達の姿が そこにあった


葵は 父ダンが拉致された事で

悲しみの気持ちで一杯だったが

リムラ村の人達の笑顔を見て 元気が湧いてきた


「良かった! 本当に良かった!」

葵は 彼らの笑顔を見て 感動の涙を流した


「葵ちゃん!

久しぶりだね!」


「サイカ村長さん!」

村長と葵は 手を握り合い 再会を喜びあった


「葵ちゃん!

これまで 君たち親子に

迷惑ばかりかけてきた事を 許してくれ・・・


リムラ村が 襲われた あの日

葵ちゃんの父ダンさんが

我々を救おうと 必死に

駆け回っていた姿を 今ようやく思い出したよ・・


ダンさんのお陰で

この村は 完全なる廃村にはならず

僅かな人数だが・・ 村に残る事ができた


これからガデム村の人達の協力を得ながら 

村を復興していこう!と思っている


それから 先程ガンメル村長に聞いたのだが

村を出ていった 大方の人々は

スンツヴァル王都の市街地で

保護されていると聞いた


この村が復興した情報が流れれば

きっと彼らは 戻ってきてくれると信じている!


全て 葵ちゃんが村の人達を先導し

協力を求めてくれた お陰なのだね!

本当に 本当にあり・・がとう・・」

サイカ村長は 感極まり 言葉が詰まっていた


それから先程 あの方々が来られ

葵ちゃんが普通の少女でない事を

教えてもらった所だよ!」


「あの方々とは?」


「葵ちゃん!いや葵巫女様!

我らの村を お救いくださり!

本当にありがとうございました!


これからこの村はこのサイカが責任をもって

葵巫女様の御意志に 添えるよう

人々が助け合い 支え合えるような

平和な村を 築いていく事を

お約束いたします!!」


サイカ村長と

中央広場にいた 全ての人達が

葵が『巫女』である事を 知らされており

尊敬の眼差しで 見つめてきたので

葵は とても驚いた・・


「村長さん・・そんな

何故 わたしの事を巫女と・・

皆さん 頭を上げてください!

私は そのような立派な人間ではありません


それに巫女という立場である事は

最近 知ったばかりですし

特別 偉い訳ではありませんから・・」


「葵巫女様!

それは違いますよ!

あなた様は 偉大なるお方です!!」


中央広場の奥から 

紳士が姿を現した


□◆□◇◆


見るからに高貴な装い

雄鷹の紋章を刺繍したサーコートを身にまとい

権力階級のみがをゆるされる

ロングソードを所持していた


彼らはスンツヴァル王都皇帝直属の家臣

ドルモンド侯と腹心のラッセル伯であった!


「なぜドルモンド侯とラッセル伯がここに?」

ヨーデルは侯爵を前にし

片膝をつき敬礼した


ドルモンド侯はかつて

ヨーデルが王都の市街地で

商売をしている時 多額の借金を負い

破綻しかけた時 助けてくれた恩義があった


またガデム村に来るきっかけになったのは

ドルモンド侯と交流の深い

預言者アブラハであったのだ!


ドルモンド侯の家系は上級貴族であり

代々スンツヴァル王都の皇帝に仕える

由緒正しい家系の一族であるのだ


「葵巫女様!

お初にお目にかかります!

私は あなた様のしもべ

ドルモンドと申します!


我が一族は 巫女様が誕生される日を

数百年 待ち望んでおりました!!

まさか私が生きている時代に 

巫女様に お会いできるとは・・・


もっと早く お迎えにあがるべきだったのに

わたくしの不忠を どうかお赦しください!」

ドルモンド侯は深々と 頭を下げ敬意を示した


「つい先日 

ヨーデルから

早馬(はやうま)で 

神具が覚醒した知らせがあり 巫女様の存在を知り

慌てて王都を出発し リムラ村に向かったのですが

到着が遅く お父上ダン様を お守りできなかった事を

深くお詫び申し上げます!


しかし今 アダム皇帝の命もあり

拉致した者達の 後を追い

追跡を命じております!

何か情報が入りましたら 

すぐにご報告させて頂きます!」


「父さんを 

捜してくれているのですか?」


「勿論です!

命にかえて ダン様を

見つけ出してみせます!」

ドルモンド侯の隣にいたラッセル伯が返事した


「葵巫女様!

あなた様これまで多くの患難に遇われ

辛い日々を送られてきたと 伺いました・・・

本来我々スンツヴァル王都が国をあげて 

あなた様をお守りすべきだったのに!

申し訳ございませんでした!!

しかしこれからは 命にかえて

お守りする事を お約束致します!!!」


ドルモンド候は葵に対し

皇帝に対して絶対的な忠誠を誓うように

自身の胸に手を当て、瞑いた!!!


『皆の者!!何をしている?

葵巫女様に忠誠を!!』

するとラッセル伯と

配下の兵士隊100名が

『葵巫女様に!忠誠を!!」と叫び

忠誠の意を示した!!

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