第32話 突然の告白
馬車の中でのジェイクのいきなりの告白に――、
「わたしは黄身も白身もどっちも好きだけど、それがどうしたの?」
わたしは首をかしげながら答えた。
いきなり卵の話だなんて、このポンコツ王子は真面目な顔をしていったい何を言ってるんだろう?
黄身が好きだって、そんなにアピールしたいことかな?
そもそもなんで卵?
あ、起きてすぐ食べたおかゆ、お代わりしたら卵が入ってたからかな?
美味しかったなぁ……。
「いや、卵の話をしてるんじゃなくてだな?」
「じゃあなんの話なのよ?」
「だからその……オレはキミが、ミレイユのことが好きなんだ。オレと――ジェイク・フォン・エルフィーナと結婚していただけませんか?」
居住まいを正したジェイクが、さっきよりもさらに真剣な顔をして言ってきたんだ。
「好き……? 結婚……?」
「ああ、そうだ」
――って、結婚!?
事ここに至って、わたしはやっとジェイクの言いたいことを理解した。
っていうか!
そろそろお腹が減ってきたからって、なに卵の黄身と白身の話だと思ってんのよ、わたしの馬鹿ぁっ!?
「な、ななななに言ってるのよ急に!? 結婚だなんてそんな!?」
そして激しく動揺した。
だ、だだって結婚ってあれでしょ!?
えっと、好きな男女があれで、それで。
だから、あの……そうあれだ!
「交尾するやつでしょ!?」
いきなりの展開に、わたしはそれはもう見事に動揺してしまっていた。
「こ、交尾!? いやそりゃその、な? 最終的にはそういうことになるかもしれないけどさ? だけどいきなりは、そんなことはしないんじゃないか……?」
「交尾しないってこと!?」
「って言うか、する・しない以前にその言いかたはどうなんだ!? もっとオブラートに包んだ言いかたがいくらでもあるんじゃないかと……」
「交尾するときに包まれるモノ……? ああ、おちんち──って、女の子にナニ言わせようとしてんのよ、この真性ド変態王子!」
信じられないっ!
女の子の口から『おち○んちん』なんて卑猥な言葉を、言わせようとするだなんて!
「待て待てミレイユ! いろいろと話が噛み合ってないし、すごく動揺してるみたいだから、まずは落ち着いてくれないかな?」
「これが落ち着いていられますか!」
だって交尾だよ!?
もちろんわたしには、アンドレアス伯爵という婚約者がいた。
だけどそれは聖女になるに際して「箔をつける」とか「権威付け」とか、そんな理由で勝手に決められたものだったし。
貴族の教養を短期間で必死に覚えないといけなかったのと、聖女としての仕事に忙殺されて、いわゆる肉体関係はなかったし。
それで結婚なんてまだまだ先だなって思ってるうちに、アンドレアスはヴェロニカ王女に寝取られてしまったわけで。
だからわたしは実のところ、惚れた腫れたの恋愛経験はまったくのゼロなの!
恋愛は超初心者な、純真無垢でピュアで
あと、動揺しているのはそういう理由だけってわけでもなくて。
その……まぁ?
ジェイクから言われたことにも、動揺してしまってるって言うか?
ジェイクはその、ポンコツ王子なんだけどすごくイケメンだし?
わたしも女の子なのでイケメンは嫌いじゃないし?
最近はまぁ、誰かのために一生懸命なところとかが、すごく好感持てるっていうか?
全然ちっともスマートじゃないんだけど、それはそれでがむしゃらなところが結構悪くないんじゃないかなーって思ったりすることも、あったりなかったりしたわけで?
それでそんな、ちょっとだけ気になってる相手から、いきなり交尾したいって告白されちゃったんだもん!
そんなのビックリして当然でしょ!?
はい説明終わり!!
「まあなんだ、白状すると、急な風に聞こえたかもしれないけど、出会ってからオレはずっとミレイユのことを想ってたんだ。強気で前向きな性格とかが魅力的で──」
「こ、交尾したいと思ってたの!? ジェイクはずっとわたしと激しく強気に交尾したいと思ってたの!?」
まさか出会ってからずっと、そんなイヤらしい目で見られてたなんて!
「だからミレイユ、さっきからなに言ってんだよ!?」
「じゃあ思ってないの!? わたしと交尾したいとは思ってないってこと!? どうなのよジェイク!?」
「いやその、それはもちろん思ってないというと嘘になるわけだけど……いやそうじゃなくてだな!? だいたいなんでいきなり交尾とかいう話になってるんだよ!? まずはそこから外れような!?」
「はぁっ!? ジェイクが先に言ったんじゃない! 人のせいにしないでよね!」
「言ってないからな! 決して言ってないからな! オレが言ったのは結婚であって、決して交尾ではないからな!」
「え……そうだっけ?」
「そうだよ」
「……まぁいいわ。そう言うことにしといてあげる」
「ああうん、ありがとう……恩に着るな……。ああもう、なんかグダグダだからもう一回言っていいかな? こほん。聖女ミレイユ、オレと――ジェイク・フォン・エルフィーナと結婚していただけませんか?」
ジェイクから再びかけられた真摯な言葉。
それはいつものジェイクとは全く違った、ちょっと大人の男性って感じのセリフで――。
だからわたしは――、
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