676話 ハイブリッジ家の奥方たちの活動

 タカシや蓮華が騎士団の訓練場にて修練を積んでいる頃……。


「へえ。ここが王都の冒険者ギルドですか」


「大きいねー。ファルテ帝国の冒険者ギルドも大きかったけど」


 ミティとアイリスがそう呟く。


「料理関係のいい依頼はないかな?」


「で、できれば栽培関係の依頼も探したいですね」


 モニカとニムも楽しげに周囲を見回している。


「ふふん。私は一度だけ来たことがあるわ。懐かしいわね」


「マリアはもちろん始めてっ! 人がいっぱいで賑やかだねっ!」


 ユナとマリアは嬉しそうにはしゃいでいる。

 そう。

 ここは王都にある冒険者ギルド本部。

 彼女たちは、冒険者活動を行うためにここにやってきているのだ。


 ちなみに赤ちゃんのミカ、アイリーン、モコナは、オリビア、クルミナ、ヴィルナ、シェリーによって滞在先の高級宿で世話をされている。

 その警備はネスターや雪月花が担う。

 ミリオンズが不在でも、赤ちゃんたちが危険に晒されることはない。


「えっと……。魔物関係の依頼は少ないようですね……」


「ネルエラ陛下のお膝元ですものね。騎士団の方々もいますし、危険な魔物は優先的に討伐されているのでしょう」


 サリエとリーゼロッテがそんなことを話していた。


「魔物討伐の依頼がないのは残念です。せっかく、タカシ様がお忙しくされている間に少しでも私たちのランクを上げておこうと思ったのですが……」


 ミティがガッカリしたように言う。


「仕方ないよ。平和なことはいいことだし。他の依頼を探そう」


「そうですね。ならせめて……この工事現場の荷運びをしましょうかね。私なら、すぐに終わるでしょうし」


「うんうん。いいんじゃないかな? ミティにうってつけの仕事だと思うよー」


 アイリスはミティの提案に賛成のようだ。


「それじゃあ、私はこれを受けることにします。皆さんはどうされますか?」


「ボクは……街の道場に顔を出してみようかな? ゾルフ砦にも名前が知られている、有名な道場があるみたいなんだよ」


 アイリスがそう答える。


「私は料理コンテストに出てみようっと。冒険者としての依頼じゃないけど、ここに募集の張り紙があったの」


「そ、それは面白そうですね。わたしもモニカお姉ちゃんに付いていきます」


 モニカとニムは、王都内で行われている『食の祭典』というイベントに参加するようだ。


「ふふん。なら私は、弓術大会に出させてもらうわ。私の腕前を見せてあげるんだからっ」


「楽しそうだねっ! マリアもそれに参加したい! いいよね? ユナお姉ちゃん」


「もちろんいいわよ。でも、優勝するのは私だからね」


「さすがに弓でユナお姉ちゃんに勝てるとは思ってないよぉ。でも、やるからには全力でがんばるっ!」


 ユナとマリアは、二人で弓術大会に出場するらしい。


「私は、王都での顔見知りに挨拶をしてこようと思います。特に用事があるわけではないんですけど……」


「サリエさんは相変わらずマメですわねえ……。わたくしは、モニカさんたちの料理コンテストに行きましょう。試食が楽しみでs……」


「ダメですよ! リーゼさんも、私に付いてきてください!」


「ええっ!?」


 サリエの言葉に、リーゼロッテが驚く。


「ハイブリッジ家は大所帯になりましたが、サザリアナ王国の貴族として生を受けたのは私とリーゼさんだけです! ここは、私たちでしっかり頑張らないといけません。ほら、しっかりしてください!」


「は、はいぃ~。分かりましたわ~。がんばります~……」


 リーゼロッテは、有無を言わさずサリエに同意させられた。


「では、ここで解散としましょう。みなさん、夕方には終わりますよね? 夕飯はタカシ様といっしょに揃って食べましょうね」


 ミティがそう仕切る。

 彼女は、ミリオンズのサブリーダーだ。

 また、ハイブリッジ騎士爵家の第一夫人でもある。

 タカシが不在の際には彼女が一番頼りになる存在なのだ。


「りょうかーい」


「分かったよ」


「わ、わかりました!」


 アイリス、モニカ、ニムたちがそう返答する。

 ユナ、マリア、サリエ、リーゼロッテからももちろん反対意見はない。

 彼女たちは、身分や戦闘能力に差異こそあるが、同じ仲間として対等に接している。

 しかしその中でも、タカシの寵愛を最も強く受け、最初期からタカシと共に行動しているミティには特に一目置いているのだ。


 一般的に言って、ハーレムや一夫多妻制などというのは、男性側の甲斐性が求められる。

 それが不十分な場合、限られた資金や時間の中で女性側が不満を抱き、破綻することが多い。

 だが、チートの恩恵を多大に受けているタカシにとって、女性たちが不満を抱かないように気を配ることは比較的容易だ。


 規格外の戦闘能力や治療魔法、そして現代知識チートにより、ハイブリッジ騎士爵領の発展ぶりは留まるところを知らない。

 その上、加護付与スキルを駆使し、妻やパーティメンバー、配下の者たちにはかなりの強者が揃っている。

 タカシが築くハーレムにおいては、少なくとも資金面に不安を感じることはないだろう。

 その安心感からか、タカシの寵愛を受ける彼女たちは皆一丸となってハイブリッジ騎士爵家のために頑張っていた。


「では、私は行ってきますね」


 サリエがリーゼロッテを連れて冒険者ギルドから出る。


「ふふん。私たちも行くわよ」


「楽しみだねっ!」


 ユナとマリアがそれに続く。


「ボクも道場に行くね」


「私たちは料理コンテストへ」


「み、みなさん、お気をつけて」


 アイリス、モニカ、ニムも続く。


「はい。皆さん、がんばってくださいね」


 ミティはそれを見送る。

 そして、掲示板に貼られていた力仕事を受けるため、受付へと向かったのであった。

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