629話 合同結婚式 新婦控室 マリア

 ニムやユナが控室にて準備を進めていた頃。

 ハガ王国の王女も、着替えを進めていた。


「えへへっ。どうかな? ママ」


 マリア王女は純白の衣装を身に着け、母親であるナスタシア王妃の前に立つ。


「ええ。とても良く似合っているわよ」


 ナスタシアが微笑む。

 今日の結婚式には、サザリアナ王国の多くの貴族が集まっている。

 ハガ王国の王妃として参列している彼女だが、同時に母として娘の姿を見守る義務があると考えていた。


「ふふふ。それにしても、ずいぶんと嬉しそうじゃない」


「うん! だって、今日は特別な日なんだもん。しっかりしないとね!」


 マリアは嬉しそうな表情を浮かべる。

 今日は、自分にとって大切なイベントが待っている。


「頑張って、素敵なお嫁さんになるのよ」


「はーいっ」


 マリアは笑顔で頷く。


「タカシお兄ちゃん、きれいだって言ってくれるかなぁ」


「きっと褒めてくれるわよ」


「そうだといいけど……。でも、緊張して失敗しないように頑張らないと!」


 マリアは、両手をギュッと握る。

 そんな彼女に、母親は優しい笑みを向けた。


「大丈夫。あなたはとても可愛いわ。それに、優しい。タカシ君も、きっとあなたのことを好きになってくれているはずよ」


「……うぅん。どうだろう。まだちょっと自信がないかも……」


 マリアは頬に手を当てながら、首を傾げる。


「あら。どうして?」


「えっとね……、タカシお兄ちゃんが好きな人って、おっぱいが大きい人がいいんでしょ? マリアは小さいから……」


 実際のところ、タカシは胸の大きさは気にしない。

 興味がないという意味ではなく、巨乳も貧乳もどちらも好きという意味だ。

 ハーレムメンバーの中で胸が大きいのは、巨乳のリーゼロッテ、ナイスバディのモニカ、隠れ巨乳のサリエ、背丈の割には豊富なミティあたりだ。

 一方で、アイリスとユナはスレンダーでありあまり大きくない。

 また、ニムもまだまだ発展途上である。

 しかし、マリアから見ればみんな胸が十分に大きいように思えた。


「まあ……。そんなこと気にしなくて良いのに」


「ダメだよぉ。大事なことだもん。やっぱり、タカシお兄ちゃんに喜んでほしいもん」


「焦ることはないわよ。ママを見てご覧なさい」


「えっ?」


「ほら。大きいでしょう?」


「あっ、本当だ!」


 母は豊かなバストを見せつけるようにポーズを取る。

 マリアはそれを見ながら、感心したような声を上げた。


「マリアはママ似だから、将来大きくなるわ。それに、タカシ君は別に大きさは気にしていないわよ。むしろ、小さくても愛してくれると思うわ。でも、マリアが望むのなら、一時的にサイズを大きくする方法もあるけれど……」


「ほんとう!? どんな方法なの? 教えて! ママ!!」


「ええ。分かったわ」


 ナスタシアが言う『一時的なサイズアップ』とは、『寄せて上げるテクニックによるサイズアップ』のことである。

 彼女も年頃のときに悩んだことがあり、当時の族長から直々に伝授された秘伝の技だ。


「ドレスの胸元をほどくわね」


「うんっ!」


 ナスタシアはマリアのドレスの胸元を脱がす。

 すると、そこには控えめながらも可愛らしい膨らみがあった。


「あら? しばらく見ない間に大きくなったわね」


「えへへ。そうかな?」


「でも、私のテクニックを使えば、もっと大きくなるわよ」


 ナスタシアはマリアに優しく微笑む。

 そして、マリアに近づき、その胸に手を伸ばした。


「んんっ……」


 マリアは目をつむり、身を任せる。

 ナスタシアは、娘の胸を持ち上げ、膨らみを寄せて集めていく。


「ふぁぁ……。なんか、変なかんじぃ……」


 マリアは、身体の奥底から不思議な感覚が湧き上がってくるのを感じた。

 それは、今まで感じたことのない未知の快感だった。


「……ふう。これで終わりよ」


 ナスタシアがそう告げると、マリアの胸は普段よりもひと回り多く盛り上がっているように見えた。


「わあ! すごい! ママ、ありがとう!」


「いえいえ」


「これでタカシお兄ちゃんにも喜んでもらえるかな?」


「ふふ。きっと、マリアのことを褒めてくれるわよ。じゃあ、改めてドレスを着ましょうか」


「うんっ!」


 マリアは元気よく返事をする。

 そのときだった。

 コンコン。

 控室の扉がノックされる音が響いた。


「失礼する。マリアの着替えは終わった頃だな?」


「兄ちゃんが来てやったぞ。マリア」


 マリアやナスタシアの返事を待たず、2人の男が部屋の中に入ってきた。

 マリアの父でありハガ王国の国王であるバルダインと、同じく兄であり王子のバルザックである。


「え? やっ! まだだよっ!!」


 マリアが慌てて胸元を隠す。

 上半身のドレスははだけたままであり、彼女はブラジャー姿だった。


「なんだ。まだ着替え終わっていないのか」


「マリアも年頃なんだな……。成長した姿を見ることができて、兄ちゃんは嬉しいぞ」


「うぅ……」


 マリアは恥ずかしさで頬を赤く染めていた。


「ちょっと? マリアが恥ずかしがっているじゃないですか。いくら家族でも、いきなり入ってこないでください!」


 ナスタシアがバルダインたちに詰め寄る。


「いやすまない。だが、せっかくの娘の晴れ舞台なのに……」


「いいから、部屋を出ていって! 後でまた呼びますから」


「だが……」


 バルダインとバルザックが渋る。

 彼らは善良な者たちだが、年頃の女子が抱く羞恥心への理解度は浅かった。


「しつこいですよ。実力を行使します。【エアバースト】!!」


「ぐはあああっ!!」


「うおおおっ!!」


 ナスタシアの風魔法により、バルダインとバルザックが吹き飛ばされる。

 部屋の壁に激突して倒れ込んだ彼らは、ナスタシアの怪力によって部屋から強制的に退去させられた。

 そんなハプニングはありつつも、マリアの準備は進められていったのだった。

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