453話 忠義度の整理
慰労会の続きだ。
料理を堪能しつつ、参加者たちの忠義度を今一度確認していく。
現状で忠義度40を超えている者は、残念ながらいないようだ。
もしいたのなら、すぐにでも加護(小)を付与しているのだが。
忠義度30を超えている者も少ない。
シュタイン、ソフィア、マクセル、トミー。
この4人だけだ。
この4人に何らかの恩を売れれば忠義度40に達して、加護(小)の付与も狙える。
だが、高い戦闘能力を持つ彼らに恩を売る機会はそうそうない。
仮に都合よくそういう機会があって加護(小)の付与に成功したとしても、俺にとって大きなメリットがあるわけでもない。
「我が盟友タカシよ。この街の料理はすばらしいな」
「ああ。シュタインが治めるリバーサイドの料理もよかったが、こちらはこちらでまた違った良さがある」
「そう言ってもらえると嬉しい。機会があれば、タカシが治めるラーグの街へも訪れたいものだ」
「歓迎しよう。俺は冒険者として街を離れることも多いので、事前に連絡はしてほしいがな」
シュタインは騎士爵として、自分の領地を守る仕事がある。
何人もの妻を持っているし、俺たちミリオンズとともにあちこち巡るわけにはいかない。
今回は、彼にとっての寄り親であるラスターレイン伯爵家からの要請ということで、アヴァロン迷宮の攻略に同行していただけである。
貴族仲間である彼が強化されるのはもちろん悪いことではないので、条件さえ満たせば加護(小)を付与することにためらいはないが。
「うーん……。おいしい! 聖王猊下にも、オススメしてみようかな」
「ソフィアの出身国は、中央大陸のミネア聖国だったか。どんな国なんだ?」
「秩序に守られた、いい国だよ。ただ一夫一妻の考えが根強いから、タカシさんには息苦しいかもね」
「そうか……。それは確かにな」
ソフィアは、中央大陸の出身である。
今回の件が落ち着いたら、本国に戻る予定らしい。
この新大陸を拠点に活動している俺たちミリオンズに同行するわけにはいかないだろう。
ただ、いずれは俺たちも中央大陸に行く機会はあるかもしれない。
俺には転移魔法があるので、俺たちが中央大陸に行く分にはそれほどの不便はない。
消費MPや転移魔法自体の難易度は上がるだろうが、その頃には俺のレベルが上がってスキルはより充実しているだろうし、慣れにより転移魔法の練度も向上しているはずだ。
「世界は広いな……。まだまだ、俺が知らないものがたくさんある」
「へっ。つまり、俺たちは武闘家としてもっと上を目指せるってことだな!」
「がんばるの。自分も、ストラス君にだけは負けないの」
マクセル、ストラス、セリナがそう言う。
「マクセルたちは、まだまだ旅を続けるのか?」
「そうだね。しばらくは、新大陸内の各国を巡る予定だよ。時期を見て、ゾルフ杯や御前試合にも出場したいと考えている」
「へっ。それに、ゆくゆくは中央大陸にも行く予定だぜ。まあ、まだ先の話だがな」
俺の問いに、マクセルとストラスがそう答える。
彼らは彼らで、武闘家として見聞を広める武者修行の旅を続けるようだ。
ラーグの街周辺で縛るのは厳しそうか。
マクセルに加護(小)を付与できたとして、彼だけを引き抜くわけにもいくまい。
彼の次に忠義度が高いのはストラスだが、マクセルとストラスの2人を引き抜くのはもっとマズい。
彼らが6人パーティを組んでいる以上、6人全員に加護(小)を付与できないと、なかなか勧誘のタイミングが掴めないな。
加護(小)による強化は大きいので、いざ条件を満たしたら細かいことは気にせずに強引に勧誘するのもありだろうが。
しかし、現時点で条件を満たしていない彼らの忠義度を積極的に稼いでいく必要性は低いか。
「いよっ! 俺たちがおいしい料理にありつけたのも、タカシの旦那のおかげでさあ!」
「いや、みんなのがんばりのおかげさ。……ところでトミーは、次の目的地は決まっているのか?」
「いえ、特には……。タカシの旦那が治める、ラーグの街に行ってみようという話は持ち上がってやすが……」
トミーがそう言う。
彼には、冒険者パーティを組んでいる仲間が数人いる。
パーティメンバー全員でラーグの街に拠点を移してもらえれば、町民たちにとって頼りになる存在となるだろう。
「それは歓迎しよう。ラーグはいい街だぞ。街中の治安がいい。一方で、西部には未開拓の森があるから、狩りにも困らない。クレイジーラビットやリトルベアが生息する」
「ほほう」
「そして、その森のさらに西部に鉱山があってな。少し前に、その周辺の開発に着手したところだ。仕事はたくさんあるぞ」
「なるほど……。一度、仲間たちと相談してみやす!」
トミーは、狙い目かもしれない。
彼はCランク冒険者で実力確かではあるが、さすがに俺やシュタインのように爵位をもらえるほどではない。
また、結婚もしていないらしく、冒険者としてもともとあちこちを巡っていたらしい。
加護(小)さえ付与できれば、俺たちミリオンズに同行してもらっても問題ない。
ただ、俺のハーレムパーティに男を加えるのは少し躊躇してしまうところではある。
まあ、例えば俺の屋敷やラーグの街の警備兵として働いてもらうのもありだ。
現時点での戦闘能力でも、キリヤやクリスティに負けず劣らずの実力を持つ。
俺たちミリオンズを除けば、ラーグの街で相当に上位の実力者である。
そこに加護(小)が加われば、ほぼ間違いなくラーグの街で最強クラスの実力者となるはずだ。
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