339話 マリアの冒険者登録
マリアをラーグの街に連れて来て、1週間ほどが経過した。
彼女は、俺やミティはもちろん、ニムやユナとももともと面識がある。
ヴィルナやロロたちにも紹介したし、今やすっかりハイブリッジ家の一員だ。
「マリア。この街には慣れたか?」
「うん! いろいろ知らないことが多いけど、楽しい街だね!」
マリアが元気よくそう言う。
ちなみに、彼女は意思疎通の魔道具なしでも俺たちと普通に会話ができるレベルとなっている。
人族の言語の習得をがんばってきたようだ。
「そろそろ、マリアちゃんも私たちの狩りに同行しますか?」
「行く! マリアの国でも狩りはしたことあるし、だいじょうぶだと思う!」
ミティの問いに、マリアがそう答える。
彼女は、大人の同行のもとで狩りを行っていたそうだ。
マリアはそこそこの火魔法に加えて、剣術や格闘術もある程度扱える。
低級の魔物であれば、問題なく討伐できるとのことだ。
「じゃあ、さっそく冒険者ギルドに行って登録しようよ」
「そうだな。マリアは10歳を超えているし、冒険者登録もできるようになったのだったな」
モニカの言葉を受けて、俺はそう言う。
冒険者登録ができるのであれば、狩りの前に登録しておいたほうがいい。
地道に功績をためて、ランクアップを狙っていきたいところだ。
「わあい! マリア、冒険者ギルド楽しみ! わくわくする!」
マリアがそう無邪気に喜ぶ。
そんな感じで、俺たちミリオンズはマリアを伴って冒険者ギルドに向かうことになった。
●●●
冒険者ギルドに着いた。
みんなで中に入る。
受付まで進んでいく。
「こんにちは。ネリーさん」
「こんにちは、タカシ様。いつもお世話になっています。本日はどうされましたか?」
俺たちの対応をしてくれるのは、いつもの受付嬢ネリーだ。
「こちらのマリアの冒険者登録を行いたい。それに、俺たちミリオンズへの加入も」
「かしこまりました。まずは、こちらの用紙にご記入をお願いします。先に冒険者登録をします」
ネリーから用紙を受け取り、マリアに渡す。
マリアは字が書けるそうだ。
彼女が項目を書き進めていく。
そんなマリアを見つつ、ネリーが口を開く。
「それにしても、またずいぶんと小さな子をパーティに加入させるのですね。タカシさんたちBランクパーティに付いていけるでしょうか。あんまりムチャはさせないでくださいね」
俺たちミリオンズは、ブギー盗掘団の捕縛作戦の功績などを受けて、パーティランク昇格の審査を行ってもらっていた。
少し前に無事に承認され、Bランクパーティに昇格となった。
「もちろんだ。それに、マリアには才能がある。ニムに勝るとも劣らない才能がな」
俺はそう答える。
一般常識で考えれば、10歳になったばかりの女の子が第一線級のパーティに加入して活躍することは難しい。
活躍するどころか、足を引っ張らないようにするだけでも一苦労だろう。
しかし、マリアには加護を付与済みだ。
ステータス操作によりガンガンスキルを強化していくことができる。
いずれは俺たちの戦闘能力に追いついてくることも可能だろう。
ニムのときもそうだった。
「タカシお兄ちゃん。ここはなんて書けばいいの?」
「ん? 職業の欄か。得意な戦闘手段を書く感じだな。マリアの場合は、火魔法使いか、武闘家あたりかな」
俺は魔法剣士。
ミティは槌士。
アイリスとモニカは武闘家。
ニムは土魔法使い。
ユナは弓士だ。
「うーん……。じゃあ、マリアは火魔法使いって書くね」
マリアが記入を終え、用紙を提出する。
ネリーが用紙に目を通す。
「マリア様は、そのお年で火魔法を使えるのですか。確かに、ニム様に並ぶ若き有望株のようですね。タカシさんは、本当に人運に恵まれていますね」
冒険者は剣士が多い。
次いで、弓士、槌士、槍士あたりが多い。
魔法使いはやや珍しい。
初級の魔法までであれば使える人も少なくないので、激レアというほどではないが。
中級の範囲魔法を使えるようになれば、Cランク認定を得やすい。
リーゼロッテやエレナもCランクだった。
10歳になったばかりのマリアが初級の火魔法を使えるということは、いずれは中級の範囲魔法を使えるようになる可能性が高いということである。
確かに、彼女は将来有望な新人と言えるだろう。
加えて、彼女はステータス操作のチートの恩恵を受けられる。
いずれどころか、あと1か月以内には中級の範囲魔法を使えるようになっていてもおかしくない。
ここで、俺たちミリオンズの攻撃魔法を整理しておこう。
俺は火魔法レベル5、水魔法レベル3、風魔法レベル3、土魔法レベル1。
ミティは風魔法レベル3。
モニカは雷魔法レベル5。
ニムは土魔法レベル5。
ユナは火魔法レベル4だ。
攻撃魔法を使えないのはアイリスのみである。
その彼女にしても、聖魔法と治療魔法は使える。
俺たちミリオンズは、パーティとして非常に多彩な攻撃手段を持っていると言えるだろう。
ここに、マリアの火魔法レベル2が加わることになる。
近いうちに、レベル3か4あたりに強化することも可能だ。
火魔法を使えるのが俺、ユナ、マリアの3人になってしまうが、大きな問題はない。
3人での合同魔法が可能かどうかのテストをしてみたいと思っていたところだしな。
「ああ。ニムといい、マリアといい。俺は本当に恵まれている。ミティ、アイリス、モニカ、ユナも非常に優秀だ。俺もますますがんばらないとな」
もちろん、ネリーにはステータス操作のことを話していない。
とりあえずはこんな感じで無難に受け答えをしておく。
「まだ上を目指されているのですね。タカシ様は、いったいどこまで登りつめるのでしょうか。私も期待しています。タカシ様は、当ギルドの誇りです」
ネリーがそう言う。
この冒険者ギルドで登録した者が、短期間でBランクに昇格した上、騎士爵を授かったわけだからな。
箔がつくというものだろう。
そういえば、彼女の忠義度は長らく測っていなかったな。
久しぶりに確認してみるか。
…………!
忠義度30に達している。
なかなかの数値だ。
登用試験組や奴隷組に勝るとも劣らない。
俺と彼女は、特に私的な交友があるわけではない。
俺の街の住民ではあるが、俺の直接の配下というわけでもない。
にもかかわらず、忠義度が高めになっている理由な何だろうか。
おそらく、俺の冒険者としての活躍を受付嬢として都度確認していたからではなかろうか。
ラーグの街近郊での俺の活動は、彼女が処理をする機会が多い。
他の地域での俺の活躍も、関係者として連絡ぐらいはあったかもしれない。
最初に冒険者登録をしてくれたのは彼女だし、俺の成長速度をもっとも身近で感じてきたうちの1人が彼女だと言っていいだろう。
「ありがとう。さて、次はマリアの俺たちミリオンズへの加入の処理を頼むぞ」
今後も活躍していけば、ネリーの忠義度もさらに上がっていくはず。
そのためにも、まずはマリアの登録をきちんと進めていかないとな。
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