281話 盗掘団の第ニ拠点へ
ブギー頭領の最後の足掻きは、タカシたちには通じなかった。
彼らは死なない程度にボコボコにされ、その場に放置された。
そして、タカシたちは隣の拠点へと向かっていった。
そのしばらく後。
ブギー頭領たちのもとにやってきた一団がいた。
「こ、これはいったい……?」
「ブギーさん! ジョーさん! みんな!」
ソフィアたち”光の乙女騎士団”だ。
彼女たち4人が、傷つき倒れているブギー頭領たちに駆け寄る。
「すまん……。嬢ちゃんたち」
「ブギーさん! よかった。意識はあるんだね。すぐに回復魔法を……」
ソフィアがそう言う。
彼女たち4人が、回復魔法の詠唱を始める。
「「「「……神の御業にてかの者たちを癒やし給え。エリアヒール」」」」
4人での合同魔法だ。
辺りを大きな癒やしの光が覆う。
ブギー頭領、ジョー副頭領、それに下っ腹戦闘員たちのキズが癒えていく。
「ぐむ……。助かった。ありがとう」
「ありがとうございます。ソフィアさん」
ブギー頭領とジョー副頭領がそうお礼を言う。
再び戦闘が可能なほどではないが、起き上がって無理なく会話できる程度までは回復した。
「いいよ。でも、いったい何があったの?」
「冒険者ギルドのやつらだ。この場所を嗅ぎつけてきやがった」
「……! 予想よりもずっと早い。わざと少しずれた位置を報告しておいたのに」
ソフィアがそう言う。
「本当にすまん。俺たちがついていながら情けねェ…!! ”オリハルコン”と”蒼穹の水晶”も奪われちまった」
「そう……。”蒼穹の水晶”が……」
「俺たちの夢もここまでだ。これ以上深入りすると、嬢ちゃんたちまでお尋ね者になっちまうぜ」
「ブギーさん……」
ソフィアが残念そうな顔をする。
「ここらが潮時だ。俺たちブギー盗掘団と、光の乙女騎士団は無関係。今なら、それを疑う者はいねえ……! 嬢ちゃんたちには未来がある。こんなところでつまらねえ汚名をかぶる必要はねえ」
「…………」
ギリッ。
ソフィアが悔しそうに奥歯を噛みしめる。
そして、言葉を絞り出す。
「……そんなわけにはいかない。僕たちには、ブギーさんたちと同じ夢がある。最後まで付き合うよ。ねえ? みんな」
ソフィアが”光の乙女騎士団”の面々に、そう問う。
「ええ。もちろんよ」
「そうだな」
「異論はないよ、リーダー」
”光の乙女騎士団”のメンバーが、そう答える。
そして、彼女たちがどこかへ向かう素振りを見せる。
「オイ……。嬢ちゃんたち、どこへ行く……!!! 余計なマネをするんじゃねえ。相手が誰だかわかって……」
ブギー頭領がそう言う。
彼は、タカシたち特別表彰者の情報をあらかじめある程度は掴んでいた。
そして、つい先ほど彼らの実力を体感させられたところだ。
やつらには手を出さないほうがいい。
同じく特別表彰者であるソフィアたちでも、勝ち目は薄いだろう。
ブギー頭領はソフィアたちを制止しようとする。
しかし。
「だいじょうぶ。ブギーさんたちはここで待ってて。傷も癒えたし、問題ないでしょ?」
「確かに、傷は癒えているが……」
「それに、隣の拠点にはナディアさんとパルムスさんがいる。彼女たちが引きつけてくれている間に、僕たちの”あの魔法”を発動させることができれば、勝てる可能性はあるよ。任せておいて!」
ソフィアがそう言う。
そして、彼女は他の3人とともに、タカシたちが向かったであろう隣の拠点に向けて駆け出した。
●●●
盗掘団の捕縛作戦の続きだ。
俺たち先遣隊は、ブギー頭領やジョー副頭領をあっさりと撃破することができた。
それに、オリハルコンと蒼穹の水晶という戦利品もある。
極めて順調だ。
次は、第ニの拠点を潰そう。
ナディアとパルムスとかいう幹部クラスがいるはずだ。
そいつらを倒せば、盗掘団の捕縛作戦は完了と言っていいだろう。
下っ端戦闘員たちが向かっていった方へ歩みを進める。
何やら、おぼろげながらも人の気配を感じる。
この方角で合っているはずだ。
俺、ミティ、アイリス、マクセル、ギルバート。
5人でずんずんと第ニの拠点に近づいていく。
そして。
「……! 待ち伏せか。ずいぶんと用意がいいことだ」
俺はそう言う。
第ニの拠点周りでは、盗掘団の面々が俺たちへの迎撃態勢を整えていた。
先頭には、幹部格らしき男女がいる。
年齢は40代くらいか。
顔が防具で隠れていて見えないので、なんとなくの雰囲気しかわからないが。
「お前がタカシか。ずいぶんと好き放題してくれたようだな」
「ブギー頭領の敵は討たせてもらうよ。覚悟してね」
幹部格の男女がそう言う。
盗掘団という無法集団の割には、それなりの仲間意識があるようだ。
このまま戦い始めてもいいが、1つだけ誤解を解いておこうか。
「まあ待て。ブギー頭領は、殺してはいないぞ。もちろん、捕縛する予定ではあるが」
俺はそう言う。
”頭領の敵だ! 刺し違えてでもタカシを殺す!”ぐらいのノリで来られると、たまったものではないからな。
ある程度は平和に行こう。
「あら、そうなの? でもいずれにせよ、戦う以外の選択肢はないわ。”あのとき”に命を救ってもらった恩を、返すときがきたわね。ねえ? パルムス」
「そうだな、ナディア。俺たちは”あのとき”に記憶を失ってから今まで、ブギー頭領と行動をともにしてきた。今や、頭領の夢は俺たちの夢でもある。このまま黙ってやられるわけにはいかん」
彼女たちがそう言う。
女性のほうがナディアで、男性のほうがパルムスという名前のようだ。
そして。
「……リッキー、来い!」
「ワンワンッ!」
パルムスの呼びかけに応え、犬が颯爽と現れた。
ファイティングドッグとは異なる種族のようだ。
結構大きい。
なかなかの貫禄がある。
どうやら、このパルムスのいう男の従魔らしい。
「ひゃっはー! ナディアの姉御が戦ってくださるぞ!」
「ひーはー! パルムスの兄貴、やっちまってくだせえ!」
「リッキー先生! 頼みますぜ!」
「バカ野郎! オレたちも加勢するんだよ!」
下っ端戦闘員たちがそう言う。
ナディアとパルムス、それに犬のリッキーが主戦力。
そこに下っ端戦闘員も加わり、全員で俺たちを迎え撃つ心づもりか。
ナディアとパルムスは、ブギー頭領や下っ端戦闘員たちからの信頼が厚い。
おそらく、確かな戦闘能力を持つだろう。
もしかすると、戦闘能力だけならブギー頭領やジョー副頭領以上の可能性もある。
気を引き締めて戦うことにしよう。
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